!!18歳になっていない人は見ちゃダメ!!
朝倉×長門(涼宮ハルヒ)
すっかり空になったアイスクリームのカップを、名残惜しそうに見つめながら、彼女は立ち上がった。
クーラーが利いた室内は、外の猛暑を感じさせない。
真夏の強い日差しが、窓の外からジリジリと照らし付けている。
8月、日曜日の昼下がり。
何かをするには暑すぎる、しかし、何もしないには長すぎる1日をダラダラと過ごしている。
こんな事ではいけないと分かっていても、この星の猛暑には、まだ体が慣れてくれない。
気だるそうに空になったカップをゴミ箱に放り投げて、床に転がったクッションにボフッと仰向けに寝そべってみる。
ひんやりとしたフローリングの感触が、背中に心地よい。
まどろむにしても、昼近くまで眠っていたせいか、目は冴えてしまっている。
ぼんやりと天井を見上げて、暇を持てあます感覚に、じっと身を沈ませる。
「ねえ、有希?」
朝倉はテーブルの前に正座で座って、黙々と本を読み続けている長門に声をかける。
パラ、とページをめくる音が止み、しばらくの間を置いて。
「なに?」
静かな返事が返って来る。
「あなたの部屋に、テレビゲームとかないの?」
「ええ」
そう言いながら、朝倉は軽く身を起こして、部屋の中を見回してみる。
生活に必要な最低限の物すら揃っていないように見える、質素な室内。
窓にはカーテンすら用意されていない。
「テ、テレビもないのね……」
「ええ」
パラ、とページがめくれる音。
広く感じる室内、確かに風雨をしのぐには十分かもしれないが『空き部屋です』と言えば、誰もが信じてしまうほどに、何もない。
「……日曜日とかって、そうやって、ずっと本を読んでるの?」
「ええ」
(の、のれんに腕押しね……)
朝倉の言葉に、ぶっきらぼうな言葉を返すだけの長門。
せっかくの日曜日、何もやる事がない……と言えば嘘になるが、特別な用事もなかった朝倉は、何となく長門の部屋に遊びに来ていた。
しかし、この殺風景な室内で黙々と本を読み続ける長門を前にすると、これを『遊び』と形容する事が出来るのかどうか、朝倉には少しばかり自信がない。
「……小物とか買わないの?」
「ええ」
長門の部屋とは打って変わって、朝倉の部屋には様々な物で溢れかえっている。
特別な思い入れはなかったが、流行の物を取り入れたり、テレビで情報を収集する事で、地球人類とのコンタクトを積極的に取る事ができる。
そのコンタクトによって、情報統合思念体が求めている、自発的な進化の復活に貢献できるかもしれない。
そんなシステマチックな理由はあるにせよ、朝倉の目には、この殺風景な部屋に暮らす長門が、とても奇妙に思えた。
「テレビとかなくて、寂しくない?」
「別に」
そう言いながら、黙々とページをめくり続ける長門。
無表情を絵に描いたような、平坦な視線で、本に書かれている文字を目で追いかけている。
「……有希ってさ、何か好きな事とかないの?」
ぴくっ
長門が、ページをめくろうとしていた手を止める。
好きな事……その言葉を耳にして、長門が思ったのは、冬の日の記憶。
しかし、脳裏に巡る記憶をたぐりながら、彼女は小さく息をつく。
あの日以来、長門の心を蝕むように縛り付けている、あの時の感覚。
そして、その感覚の後、このマンションの一室で行われた、ハルヒへの『悪戯』の光景を思い出す。
あの時から、長門とハルヒの間には奇妙な関係が生まれている。
不純な関係という言葉が正しいのかどうかは分からない。
しかし、それは決して正常な関係とは言えないだろう事は、長門にも分かっていた。
しかし、『あの行為』をする事を、長門は確かに楽しみにしている。
苦しくて、辛いはずなのに。
その感覚が全身を覆い尽くして、その時は、すぐにでも逃げ出してしまいたいはずなのに。
その行為が終わると、体の奥にジンジンとした不思議な熱さが残り、とても切ない気持ちになる。
その行為を、もっと続けてほしい……そんな事を思ってしまう。
「……別に」
しばらくの沈黙の後、長門がポツリと言う。
明らかに正常な反応を返さなかった長門に、朝倉は「?」と思いながらも、言葉を返した。
「隠さなくていいじゃない?急進派と、主流派のインターフェース同士、情報交換は必要でしょ?」
と言いながらも、朝倉は長門の『好きな事』に興味があった。
日頃から無表情で、何を考えているのか分からない彼女が好きな事。
『読書』という回答であれば、あそこまで返答までのターンアラウンドは必要なかったはず。
その疑問が、朝倉の琴線(きんせん)に触れていた。
「……」
本を読む視線を上げて、その目を泳がせる長門。
いつもと異なる行動に、朝倉の好奇心がさらに大きくなる。
「いいじゃない?言いづらい事でも、元々、私たちは人間じゃないんだし。個体差を根拠にしたニューラルネットワークの並列化は、情報統合思念体にとっても有益なはずだから」
小難しい事を言ってみるが、言いよどむ長門の姿に、純粋な好奇心が膨らんでいく。
確かに、個体差という情報統合思念体にない特性は、自律進化研究の一助になる可能性はある。
しかし、今の朝倉は、長門の好きな事が何なのか、それが気になって仕方がない。
「……」
パタン
本にしおりを挟む事もせずに、長門が本を閉じた。
そして、その落ち着かない視線で、朝倉の顔をじっと見つめる。
「そんなに言いづらい事なの?」
体を起こして、朝倉が尋ねる。
その言葉に、長門の目がさらに動揺する。
「……私の興味対象は、一般的な地球人類の感覚でも、非常に特殊なもの」
(なに?なにそれ??)
朝倉の中で、より一層好奇心が大きくなる。
しかし、そんな思いはおくびにも出さず、朝倉は小さく微笑んで小首を傾げて見せた。
「それなら、なおさら重要だと思うけどな。特殊であるという事は、その情報が特異性があり複雑である事の証明でもあるわけだし」
「……そう」
コクリ、と長門が小さくうなずき。
「……くすぐる事」
消え入りそうな声で、長門が言う。
「え?」
その言葉を聞き取れず、朝倉が聞き返す。
長門の目がさらに動揺し、表情のない顔で、わずかに目を伏せる。
そして、今度ははっきりとした言葉で言った。
「……くすぐる事」
長門は、そう一言だけ言うと、再び本に視線を落とした。
しかし、その目は文字をなぞる事ができず、本を握る指先に思わず力が入ってしまう。
(言うべきではなかった)
心の中で、そんな後悔の思いが生まれて、あっという間に埋め尽くしていく。
好きな事は何?と尋ねられて、その回答が『くすぐる事』。
異常行動と思われなかっただろうか。
精神構造に潜在的な問題があると思われなかっただろうか。
まして、本来であれば観察対象である、涼宮ハルヒとの『遊び』に気づかれないだろうか。
そんな不安が大きくなって行く。
弱々しい息が、口元から流れるように漏れ出してしまう。
室内には静寂が支配し、本に落としている視線を上げる事がためらわれた。
「……ゆ、有希……さん?」
細かく震える言葉。
顔を上げなくても分かる、朝倉は間違いなく動揺している。
弁解をするにしても、上手な言葉は思いつくはずもない。
「なに?」
心の中では不安が嵐のように吹き荒れているが、それを必死に押し殺すようにして、長門はゆっくりと顔を上げた。
レースカーテンがクーラーの風な流されて、はたはたとなびいている。
昼下がりをやや過ぎて、日差しはますます強まったように感じた。
その日差しをレースカーテンを透かして受けている朝倉は、しばらくポカンと口を開いて、長門を見つめていたが、やがて。
「くすぐるって……あの、コチョコチョとか言ってやる、あの…?」
「ええ」
高速な処理能力を誇る、長門のニューラルネットワークが活発に活動を始める。
派閥が異なるとは言え、朝倉とはヒューマノイドインターフェース同士。
出来ることであれば、友好的な関係を保つべきだし、お互いに協力し、涼宮ハルヒの持つ未知数の能力へのアプローチを続けるべき。
しかし、明らかに朝倉は、長門の趣向に対して驚愕の色を隠せていない。
何とか弁解し、自分の発した言葉の方向性を操作しなくては。
「……変?」
しまった。
長門は自分の口から出た言葉に自分でも驚きながら、強い後悔の念を抱いていた。
弁解するべきなのに、コミュニケーションをコントロールすべきなのに、思わず開き直ってしまった。
「…い、いえ、変…… と言う事も…な、ないけど……」
語尾が消え入るような弱々しい言葉を吐いて、朝倉は長門の顔を見る。
一瞬、目が交じり、長門は思わず目を反らしてしまう。
「……くすぐって、な、何がいいの…?」
「有機知性体の欲求を満たす手段」
会話を取り持つようにして、どこか遠慮がちに尋ねて来た朝倉に、長門はあっという間に言葉を返した。
「……へ、へえ」
「『笑い』という行為は、それを断続的かつ連続した、一般的に日常的と定義される状態とは異なる呼吸と定義した場合、チンパンジーからハツカネズミの一種に至る全般的な地球生命体に共通した生体反応。
しかし、『笑い』という一意の言葉として定義された生体反応は、地球人類固有のもの。
『笑い』によって、副交感神経が優位状態となり、精神的にも肉体的にも、生存に有利な状態となる」
一気に話し終えて、長門は再び本に視線を落とした。
やり遂げた……
そんな、不思議な達成感と、何とか自分の正当性を相手に伝えきったという満足感が、心の中を満たしている。
しかし、その奥底では、未だに不安が断片的に残されていた。
「た、確かに『笑い』は、自己免疫細胞を活性化させる作用があると聞いたことはあるけど……」
「くすぐりは、それを端的に実現する。有用と判断できるもの」
そう言いながらも、心の奥底にある不安は決してぬぐい去る事ができない。
確かに『笑い』の有用性は説いたが、長門自身が、くすぐりに対して特別な思い入れを持っているという事と、それは直接は関係がない。
「だったら、私が、有希をくすぐれば、有希が生存に有利な状態となるって事?」
「ええ」
長門は本に目を落としながら、小さくうなずいた。
論破した……
長門の心の中に存在した不安が、一気に解消されていく。
くすぐり、という行為の正当性を伝えきった今、『くすぐりによる笑い=生存に有利な状態』という、共通認識が生まれたはず。
涼宮ハルヒと、あの行為を続けたとしても、問題はない。
ほっとして、文字に再び目をなぞらせようとした彼女に、朝倉は静かに語りかけて来る。
「とても興味深いわね。当該事象に対しての有効性は理解したけれど、実体験を要すると判断するわ。有希をくすぐって試してみてもいい?」
ぴくっ
長門の指先が小さく動く。
あんな事を言ってしまった手前、断る事もできない。
「……どうぞ」
そう言いながら、パタンと本を閉じ、床にそっと置く。
表面的には冷静を保つように心がけているが、長門の心は決して穏やかではなかった。
先ほどから、くすぐりという言葉を口にしている中で、彼女の指先に蘇るのは、ハルヒの肌の感触。
二人で行う、誰にも知られる事がない行為。
少しだけ性的な印象を否めない、秘密の時間。
自分の腕の中で、大きく口を開いて、目尻に涙を浮かべたハルヒの顔を思い出すと、自分の心音が聞こえてきそうなほどに鼓動が高鳴ってしまう。
「…じゃあ、遠慮なく。その服装だとやり辛いから、よかったら、そのTシャツ脱いでくれると助かるな」
そう言いながら、朝倉が立ち上がる。
朝倉は、真夏という事もあって、キャミソールにミニスカートという出で立ち。
一方、長門は、先日にハルヒから贈られたばかりの緑色のTシャツに、ジーンズパンツ。
おもむろにTシャツの裾を握って、それを脱ぎ捨てた長門は、正座したままで朝倉の顔を見つめる。
朝倉の顔には相変わらず笑顔が浮かんでいるが、その笑顔の中に、いつもと異なる妖しいほほ笑みが混ざっているように思えた。
Tシャツを脱ぐと、小振りな胸を隠すブラジャーのみ。
クーラーが利いているとは言え、真夏の日差しに、やや汗ばんだ肌。
さらに『くすぐり』が加えられるという事に対して、胸が弾むように鼓動し、さらに汗が滲んでしまう。
そんな長門の心の内を知ってか知らずか、朝倉はトコトコと歩いてくると、彼女の背後に座り込む。
背中に朝倉の存在を感じながら、長門は静かに目を閉じる。
やはり、くすぐられると分かっている状態での、この時間だけは、どうしても慣れない。
まして、自身の身体状態をトレースされていると分かっている以上、何とかして気持ちを落ち着かせて、高鳴り始めている鼓動を収めなくてはならない。
そんな思いが、逆に長門の心をはやらせてしまう。
「……まだ?」
長門がそう尋ねた瞬間。
朝倉の指先が、長門の脇腹にそっと触れる。
「…ぅっ……!」
細い10本の指先が包み込むようにして、長門の脇腹を覆い、その1本1本から優しい刺激が送り込まれ始める。
「……っ…」
意表を突かれる形で、突然に刺激され始めた脇腹に、長門が全身をビクッと震わせる。
愛撫に近い刺激、まだ耐える事ができる。
「…有希ってさ、肌綺麗だよね」
そう言いながら、朝倉は長門の両脇腹にサワサワと指先を這わせていく。
弱く優しい指先の動き、それが、長門の脇腹の上で妖しく動き回る。
「……っ!」
笑いがお腹の底からせり上がって来るが、それを必死に抑え込む。
「同じヒューマノイドとして、表皮のケアの方法に興味があるわね。何かクリームとか付けてるの?」
「…つ、つけてな…ッひぃっ!」
長門が答えを口にしている途中で、朝倉の指先がグニッと脇腹の皮膚に、強めに押し当てられる。
今までとは異なる刺激、長門の薄い肌が、肋骨の上でグニュッと動く感触に、体が大きく跳ね上がってしまう。
「ふふふ……油断してるから」
悪戯っぽく、そう言った朝倉がグニグニと脇腹に指先を押し当てる。
弱々しい愛撫するような刺激から打って変わって、まるで揉みしだくような動きで、長門の皮膚をくすぐる。
「……ぅっ……くぅっ……!」
敏感な脇腹の肌を、朝倉の細い指先がつねるように弄ぶ。
薄い皮膚と肋骨が擦れ合い、長門の中に激しい刺激を送り込む。
それに歯を食いしばって耐えながら、長門は出来るだけ心を落ち着かせようと努力する。
「……ぐっ…!くくっ……うぅッ…!」
それでも、脇腹をグニグニと揉まれるのだから堪らない。
凄まじい刺激が、何度も長門の体を貫き、強く『笑い』の衝動を送り込んで来る。
「よし、じゃあ、早く『笑い』のサンプルを採りたいから、有希、バンザイして?」
「…えっ」
長門にしては珍しく、語尾に力が入った言葉が漏れる。
無理もない、自らの一番の弱点を晒せと言われて、冷静でいられるはずがない。
一気に鼓動が高鳴り、胸が弾けてしまうのではないかと思うほど、心音が強まってしまう。
「だめ?」
朝倉の言葉。
ここで断る事もできるはずもなく、長門は小さく、いつも以上に弱々しくコクリとうなずくと、恐る恐る、両腕を上に挙げていく。
ドクッドクッドクッ
鼓動がより一層高鳴ってしまう。
長門自身が一番良く知っている、自分の一番の弱点。
くすぐられたら、絶対に耐えられない場所。
それを、自分の意志で、朝倉の前に晒しだそうとしている行為に、興奮が高まっていく。
両腕を挙げて、決して下ろさないように後頭部でガッチリと両手の指先を絡み合わせる。
そんな長門の行動を、どこか妖しげな香りを含めた笑顔で見つめていた朝倉の指先が、ゆっくりと、腕の付け根へ向けられる。
心音が耳の奥で波打つように響いている。
後頭部で結んだ指先が小さく震えていた。
エアコンから流れ出す涼しい風の中にあっても、肌は上気して、自然と汗が滲んでしまう。
長門は必死に口を開いて、浅い呼吸を繰り返し鼓動を収めようと努力する。
しかし、自らの意志で開かれた腕の付け根に、少しずつ近づいていく朝倉の指先を視界の隅に見つめながら、心を落ち着かせる事などできるはずもない。
口から息を吸っては吐き、その度に、喉の奥が確実に乾いていく。
「……はぁ……はぁ……」
動揺して止まない心と、それに同調するように全身が熱くなる。
素肌を晒す事に対しては感慨はなかったが、その素肌を晒す事で、これから自分に与えられようとしている刺激を思うと、額に汗が浮かぶ。
「ねえ、有希?」
背後から朝倉の落ち着いた言葉。
浅く顔を上げて、彼女の顔を見ようとした長門は、ビクッと全身を震わせて首をすくめてしまう。
朝倉の指先が、大きく露出した長門の腋の下へ突き刺さり、その柔らかな皮膚をグニグニと刺激し始めたのだ。
突然の刺激に、長門がその小さな体を縮めるようにして、何とか、朝倉の指先から身を守ろうとする。
しかし、そんな彼女の僅かな抵抗も、背後から襲いかかる朝倉の指先には、大した障害にはならない。
後頭部で結ばれた指先が小刻みに震えて、それでも尚、その結び目を綻ばせまいと必死に力を込めているのが分かった。
朝倉の口元に不敵な微笑が浮かび、腋の下へ指先を潜り込ませ続ける。
「……ッ…!……くっ!……」
口元から苦しげな吐息を漏らしながら、長門が腋の下へ流し込まれる刺激に懸命に耐えている。
腰をくねらせて、その細い体を左右に揺らせながら、敏感な肌に走る、意地悪な攻撃から逃れようとしていた。
しかし、その行動は返って彼女の加虐心を刺激してしまう。
「有希って、腋の下が弱いの?」
「……ふぅッ…!そんな事ッ…!むぅッ!」
腋の下の柔らかな皮膚に指先が突き刺さっている。
汗ばんだ皮膚の上で、朝倉の細い指先が粘っこい動きで、長門に『笑い』の衝動を送り込み続けていた。
閉じる事の許されない腋の下の中で、その細い指先がコチョコチョと薄い肌をいじり回し、脇腹への刺激で敏感になった彼女の体を執拗に翻弄する。
「…ふうぅっ!……はぁッ…!やめ……ひぃぃっ!?」
長門の体が大きく跳ね上がる。
両腋の下に差し入れられていた朝倉の指が、彼女の腋の下の中で激しく動き回り始めたのだ。
それは、今までのグニグニとして刺激とは違い、その皮膚の上をサワサワと愛撫するような。
細い指先は、全くの遠慮などなく、小さな長門の体から『笑い』を沸き起こそうと蠢き続ける。
「…ひぐぅッ!うぅっ!……くへぁッ……!」
顔を真っ赤にしながら、腋の下に与えられるくすぐったい感覚に必死に抵抗する。
笑ってしまえば楽になれる……そう思いながらも、笑ってしまえば、今度は呼吸が苦しくなる。
かと言って、このまま腋の下をコチョコチョといじられ続ける事に耐え続ける事など出来るはずがない。
「もう汗でグチャグチャ……本当に、こんなのが気持ちいいの?」
朝倉はそう言いながら、有希の紅色に染まった右の耳に、ふぅと息を吹きかける。
ガクガクガクッ!
長門の腰が激しく震え、口からは「ふぁぁっ!」と、甘い吐息が漏れだした。
「あら、有希もそんな声が出せるのね?」
そう言いながら、朝倉は口から舌をベロリと垂らして、長門の耳をペロペロと舐め始める。
腋の下をくすぐられながら、敏感な耳を舐められ、長門の体が正直に反応してしまう。
「はぁぁッ!…やめッ…!やめぇぇッ……!」
ペチャッペチャッ……
耳の中に届く、朝倉の舌から自分の耳を舐め回す音。
腋の下は汗でびっしょりに濡れて、その肌の上を激しく指先から動き回っている。
あまりのくすぐったさと、耳への舌先の刺激が、長門の心を溶かしていくようだった。
「くッ!…ふぅぅっ……!やめぇッ……やめてぇッ…!」
腋の下が激しくくすぐったくて、右耳がくすぐったくて、長門の体は先ほどからブルブルと震えっぱなしだった。
もう笑ってしまいたい。
すぐにでも、後頭部で絡め合わせている指先を解いて、腋の下に縦横無尽に走り回る、朝倉の指先から腋の下を守りたい。
しかし、長門にはそれができない。
いや、正確には『できない』のではなく『自分から逃げ出す事をしたくない』と言った方が良いのかもしれない。
「くふッ……!やめてぇぇッ……ひゃぁぁっ!!あひっ!やめぇぇッ!!」
口では懇願の言葉を漏らしながら、体は確実にくすぐりを欲している。
怪しい刺激、我慢できない刺激。
でも、その感覚が、全身を火照らせて、とても心地の良い時間を与えてくれている。
「ふふ……じゃあ、有希には本格的に笑ってもらおうかな?」
朝倉は小さく言うと、腋の下の中でコチョコチョと動かしていた指先を、再び柔らかな皮膚に突き立てる。
そのまま、グニュグニュと指先を激しく震わせ始めたのだから、長門にとっては堪らない。
すっかり敏感になった腋の下に与えられる、激しいくすぐったさに、全身がガクガクと震え始める。
「むぐぅぅっ!……くひぃっ!!…はぁっ!はぁぅぅっ!!ふひぃっ!」
耳からは舌先が去っていたが、両腋の下への意地悪な攻撃は激しさを増している。
長門の弱点である腋の下の、その一番奥底に忍び込まれた指先が、柔らかな皮膚と皮膚の間にグニュッと入り込んで、ブルブルと震えて。
それだけでも、ものすごくくすぐったいのに、朝倉は耳元で静かに囁いてくる。
「ふふ……全身、汗でびっしょりね。顔を真っ赤にして、とてもくすぐったそう」
そう言いながら、腋の下の柔らかな感触を楽しむように、指先を動かし続ける。
「くふッ……!ひひっ!うははははッ…むぐぅッ……くひひっ……ぐぅッ!」
いよいよ長門の口から笑い声が溢れ始めている。
それでも、笑ってしまった後の苦しさを知っている彼女は、唇を噛んで必死に抵抗していた。
「目をトロンとさせちゃって……くすぐったいのが好きなんて、有希って変態さんなのね」
朝倉の言葉に、長門がくすぐったさに震える体を起こして、首をふるふると横に振る。
その時を待ってました、とばかりに朝倉の左手が腋の下から脇腹に駆け下り、ゴリゴリと激しく揉み上げ始めた。
汗に濡れて、敏感になった脇腹に突然の刺激。
いくら長門とは言え、その突然の攻撃には耐えられない。
「くひひひひひッ!あはははっ…ぶふぅッ!…あはははっ……!あははははははははははは!!」
ついに長門の口から激しい笑い声が吹き上がる。
それを見つめながら、朝倉が長門の左脇腹と右腋の下をサワサワと翻弄し続ける。
「ひゃぁッ…ひゃひひッ!やめッ……ふぁひひひひひッッ!やめぇぇッ……くひひひひッ!!」
露出した腋の下の上で、細い指先が皮膚をいじり回し、脇腹では指先がコリコリと細いウエストを刺激する。
長門は笑いが迸り止まらない腹部がプルプルと痙攣するのを感じながら、若干の焦りを覚えていた。
(……くすぐったすぎる!)
腋の下へ入り込んだ指先と、脇腹の貼り付いた指先。
その両方が、長門の敏感な皮膚に対して、くすぐったくて仕方がない刺激を送り込んでいる。
しかし、そのくすぐったい刺激は、ハルヒと行う行為とは明らかに違う。
腋の下の薄い皮膚を弾かれるように刺激されたり、脇腹の薄い皮膚をグリグリと悪戯される、1つ1つの刺激が、どれも長門の『限界』を遙かに超えている。
「…あはははっ…!!きへへッ…!……ぷぎゃぁぁあはははははははははははは!!あはッ!?く、くッ……くすぐッ…!うひゃひゃひゃっ!!」
口からは笑いが絶え間なく流れ出し、腋の下と脇腹には、凄まじいくすぐったさが走り回っている。
どれもが堪らなくくすぐったくて、堪らなく苦しい刺激。
それなのに、体は、そのくすぐったさを望んで止まず、逃げ出す事ができない。
「くすぐったいでしょ?有希みたいな変態さんには、この情報操作が有効かなって思ったんだけど」
長門は動揺を隠せず、顔を上げようとする。
しかし、脇腹と腋の下をくすぐられ続けていては、体を自由に動かす事もままならない。
「うひひっ!?うはははははははははははッッ!!ひぁぁッ!…じょ…ッくふふふふふふっ…情報操さッ…あははははははははは!!」
「ええ。あなたの皮膚感度を上げたのよ。だから、ほら」
そう言いながら、朝倉が長門の脇腹にツンッと指を突き刺す。
その瞬間、長門の全身を激しいくすぐったさが貫き、背中がガクッガクッ!と大きく震え跳ね上がる。
「ね?ここも、ほら?」
つんっつんっ
脇腹から腋の下、腹部や背中に次々と朝倉の人差し指が突き刺さる。
その度に、まるで腋の下をくすぐられたような激しい刺激が、長門の全身に襲いかかる。
「はひぃッ…!くひひひっ!!あひぃぃッ!……くははははははは!!あはははははははは!!」
全身の至る所をツンツンと突かれながら、腋の下への刺激は止む事はない。
笑い声と嬌声を混ぜながら、長門はひっきりなしに体を跳ね上げさせて、朝倉を楽しませている。
「うん、とても敏感」
そう言いながら、朝倉は腋の下と脇腹から、そっと手を引いた。
「はぁッ……はぁッ……んっ…はぁッ……」
突然去ったくすぐったさの波。
笑い声を張り上げ続けていた口からは涎が流れ、目尻には涙が浮かんですらいる。
それに構う余裕もない様子で、長門は口で何度も深い呼吸を繰り返し、全身に酸素を送り込もうとする。
「ありがとう。『笑い』のデータは十分に採集できたわ」
そう言いながら、再び長門の両腋の下へ指を潜り込ませる。
去ったとばかり思っていた、くすぐったい時間の再来に、長門が背中をのけ反らせて、叫び声にも近い声を上げる。
「はぁぁぅッ!!」
朝倉はニコニコとほほ笑みながら、腋の下の中で指をグリグリと動かして、その薄い肌を再び悪戯し始めた。
「はひぃぃッ……!あははははははははははッ!な、なぜぇッ……!くははははははははははははは!!あはははははははははははははは!!」
どうして!?
十分に笑いのデータは取れたはずなのに……!
長門は再び、自分の両腋の下に襲いかかった、朝倉の指先に身もだえしながら、首を左右にブンブンと振り回しながら思う。
その疑問を口に出したくても、口からは笑いが溢れ出して、言葉を紡ぐ事もできない。
「ふふ……有機知性体の、くすぐりに対する反応は分かったわ。だけど、どれだけの耐性があるのか、それも知っておく必要があると思うの」
そう言いながら、朝倉が長門の腋の下をくすぐり続ける。
「あははははははははッッ!あはっ……うひゃぁぁっ……やだッ……もうやめぇッ……!くひひっ!?もうやめぇぇぇッッ!」
「だめよ。ほら、コチョコチョ……」
朝倉が妖しいほほ笑みで、長門の背後から両腋の下を狙う。
その指先が柔らかな皮膚に突き刺さり、堪らない刺激を送り込む度に、長門の口からは涎と笑い声が激しく吹き上がる。
朝倉は心の中で、ある可能性を思いついていた。
それは、この『くすぐり』という行為によって生じる可能性がある、涼宮ハルヒの情報爆発の事。
(試してみてもいいかもしれない。そのためには、もっと情報を、有希から集積しなくては)
相変わらず、朝倉の指先が長門の腋の下を襲い続けている。
すでに限界など通り過ぎ、ただ、笑い声を上げ続けるだけとなった長門。
朝倉の興味が消えるまで、当分の間、長門のくすぐったい時間は終わりそうにない。