!!18歳になっていない人は見ちゃダメ!!
長門×朝倉(涼宮ハルヒ)
窓にカーテンが取り付けられてから、随分と部屋の中に充満していた殺風景さが和らいだように感じる。
窓の向こう側に広がっていたポツリポツリと明かりを申し訳程度に灯した夜景は水色の布に遮られ、部屋の中央にはコタツが一脚置かれているだけ。
その上には小さな茶碗と急須が1つずつ配されて、茶碗の中にはほうじ茶がなみなみと注がれている。
部屋の中は真冬だと言うのに寒くもなく暑すぎる事もない。
ヒーター1つないのに如何なる理由で温度が調節されているのか、という疑問は彼女には愚問だった。
ステレオデッキ1つなく、テレビすらも置かれていないリビングの一室。
遠くから聞こえてくる車のタイヤが地面を擦る音と、時折クラクションが響くだけ。
風もなく、雪もない、煌々と天井からは白い蛍光灯の明かりだけが室内を浮き上がるように照らし付けて、寒々とした部屋をさら冷たく映し出しているようだった。
「情報凍結の解除を申請」
彼女が所属している同好会の自称『団長』が半ば無理矢理に選定した、白い毛糸のモコモコとしたセーターに淡い紺色のジーパンという出で立ちで、襖の前に立ちポツリと言葉を放つ。
カタリと何かが外れたような音を聞いた彼女は、襖をそっと開く。
「個体識別『朝倉涼子』の分解情報素をアクティブモードへ」
暗い部屋に向かって再び彼女がポツリとつぶやく。
何やら危ない儀式でも始めるのではないかと思われるような雰囲気を漂わせながら、長門が一歩室内に節を踏み入れる。
部屋の壁は褐色の土塗りで、その壁伝いに幾本かの青白い光りの筋が一瞬だけ走ったかと思うと。
何も置かれていない質素な和室の中、長門の正面に面している壁を前にした虚空に見た事もないような模様がいくつか浮かび上がり、それが少しずつ人の形を象っていく。
「情報素連結を確認、Activation」
その人型から青白い光りが消え失せて、黒く長い髪がフワリと流れるようにして広がった。
2本の細い腕の先、手首から先は壁に埋められて。
動揺に2本の足も、足首から先は壁に埋め込まれた形で暗がりに人影が現れる。
「情報凍結解除完了、起動せよ」
その言葉を合図にしたように「うぅ……」と小さなうめき声を上げた人影が顔を上げる。
端正な顔立ちに大きな瞳。
黒髪は解かれて流れているが、その顔には見覚えがある。
かつて、長門たちと同じ学校へ通い、長門の支援を任とされながら自律的な行動を行動を取り、結果として情報の連結を解除された者。
情報の形態素まで一度は分解されながら情報統合思念体による決定で、この部屋で長門による『罰』を受ける事となった者。
かつて『朝倉涼子』と呼ばれた少女が、手足の先を壁に塗り込まれた姿でうな垂れていた。
情報連結を解除され、長門による情報操作でカナダに引っ越したとされた少女。
日本にいるはずもなく、この部屋にいるはずもない。
まして、この世界からは疾(と)うに消え去ったはずの彼女がここにいる事を誰が知っているはずもない。
彼女は気だるそうに顔を上げ、前髪垂れる額の間から大きな瞳に自分の前に仁王立ちする長門の姿を捉えた途端。
「ひっ……!」
と、ひどく怯えたような声を上げる。
小柄の少女がモコモコの白いセーターを着込んで“ちょこん”と立っているようにしか見えないが、朝倉の恐怖の声は明らかに長門に対して発せられていた。
しかし、その恐怖の声は長門の立ち姿に対するものではない。
「あなたが『ここにいる理由』を行う」
日本語としておかしな言葉ではあったが、長門はそう言いながらスタスタと朝倉の横まで足を進めると、その背後で襖が音もなく自然に閉まっていく。
「…や…やだ…!もうやめて……」
両手両足を必死に動かしながら朝倉は怯えた口調で言うが、それに意を介さず長門が朝倉の耳元に顔を近づける。
室内には襖の隙間から差し込む淡い蛍光灯の明かりと、壁全体から放たれる黄緑色の不思議な淡い光りだけ。
その闇の中、朝倉の体を包み込んでいるのは、胸をグルグルと巻いただけの白い布帯と、腰部(ようぶ)を巻き隠す布帯だけ。
両腕は壁に埋め込まれて大きく上に挙げた形のまま動かす事もできない。
両足も動揺に動かす事もできず、がに股の姿で固定されてしまっていた。
「あなたは、本来の責務を全うしなかったばかりか、『あの人』を殺害しようとした。情報統合思念体の決定により仕方のないこと」
長門は笑いもせず冷たく言い放つ。
「っ……やだっ……!もうやめて……お願い……!」
懇願するような眼差し、目は恐怖に見開かれて、その瞳には長門の小さな顔が映し出されていた。
しかし、長門は首を横に振りながら。
「ダメ」
その言葉と共に、自身の顔を大きく開かれている腕の付け根へと向かわせる。
上に腕を挙げた姿で閉じる事も、ましてその場所を防ぐ事もできない朝倉の腕の付け根。
そこに、長門の唇がそっと触れる。
「……はっ…!きゃあぁぁ!!」
朝倉がビクッと体を弾かせるように跳ね上がらされる。
口から吹き出した悲鳴、しかしその響きの中にはどこか甘い香りが混ぜられていた。
大きく開かれた腋の下へ長門の唇が触れ、その柔らかな肌の上でパクパクと開いたり閉じたりを繰り返す。
敏感な皮膚を柔らかな唇が優しく愛撫するような感覚。
しかし、そこが腋の下である事と、長門が行う『罰』の与え方と相成って快感はそこには生まれない。
「ぅくっ……!はひゃっ!く、くすぐるのは……ぅはっ!…く、くすぐるのはやめて!ひひっ!あっ……や、やめ…くぅっ!」
パクパクパク……
腋の下に食らいつくわけでもなく、その敏感な肌の上に唇を当てて開いたり閉じたりを繰り返すだけ。
大きく開かれた腕の付け根の上に送り込まれる、長門の唇による刺激は朝倉の心を大きく揺り動かさせる。
「ひひっ!はっ…はひゃひっ!やっ…やめ…ふくぅっ!……く、くすぐるのだけは…っ…ふひぃっ!」
「ダメ。これは罰。あなたが一番苦手な場所を舐めて、罰を与える」
朝倉の目に真剣な恐怖が浮かぶ。
両手首を壁に塗り込まれた姿では、自由に両腕を動かす事もできない。
まして、両足をばたつかせて逃げようにも両足首も壁に塗り固められてしまっている。
胴体と頭から上だけに与えられた自由だけでは、この窮地を脱する事は到底適わない。
長門の唇は相変わらず朝倉の、右腋の上でパクパクと唇を動かし続けている。
薄い皮膚の上に柔らかな唇が食い込み、それがプルプルと敏感な肌を刺激する度に朝倉の体に流し込まれるのは『くすぐったい』感覚。
それは甘く笑いを誘う感覚のようでありながら、腋の下を刺激され続ける事は決して耐えられるものではない。
「くっ……や、やめて…くふっ…!ふふっ……も、もうやめ…っ…ひひっ…!」
眉間にシワを寄せて右腋の下に加えられる刺激の波に我慢しようとしても笑いが口を突いて出てしまう。
朝倉の体を駆け回る激しいくすぐったさ、それは四肢の自由を奪われた上に小部屋に閉じ込められて、それに誰にも気づいてもらえないという『恐怖』や『絶望』に直結し、さらに強さを増していく。
「ダメ。あなたを解放する事は禁止されている。また、私にあなたに対する『罰』が一任されている以上、あなたは私の意のままでなくてはならない」
「ひゃっ…はひゃっ!だ、だから、どうしてくすぐりなっ…ひきぃっ!はっ…ふひゃひゃ!」
朝倉の長い髪が暗い室内の空間へ流れるように振り回される。
自由になる頭部を必死に振り回し、腋の下の上に加えられる我慢しようがない刺激を何とか和らげようとしてみるが、それは無駄な足掻きにしかならない。
胴体をどんなに捻ってみても、両手足を動かせる限りに振り回そうとしても、長門の唇は腋の下に貼り付いたまま一向に離れる気配を見せなかった。
「やめぇぇっ!へはぁっ!ふひひっ!も…もう…うひっ!くっ…くすぐったいって言ってるじゃない…ッ!ひひゃぁっ!はひゃ!くっ…くふふふふふ!」
「くすぐったい事は知っている。問題ない」
「ふっ…ふひぃっ!だ、だってら……やっ…やひィッ!くふっ…!ちょ…ちょっと!ヤダって言ってるのにッ……ひゃはっ!」
朝倉の言葉に1つ1つ丁寧に、無慈悲な返答を返しながら長門は腋の下を刺激し続けていく。
単調に、作業的に加えられる腋の下へのくすぐったさ。
そこに触れている唇は温かいと言うのに、長門の言葉の1つ1つには鉄を思わせる冷たさが潜んでいる。
「自律神経はそのままにしてある。これは慈悲。あなたは私に感謝するべき」
そう言いながら長門は朝倉の腋の下に唇を貼り付けながら、その汗に濡れ始めた皮膚の上に静かに舌を下ろしていく。
唇による刺激だけでも十分すぎるほどに反応していた朝倉の体が、舌先による刺激にさらに激しく反応する。
「ひっ…ひぎぃっ!くっ…くふふっ!はっ!むっ…むふふふっ!や、やめっ…ひっ!ひぎぃぃっ!ふひゃひゃひゃひゃ!」
朝倉の固定されている両手首は、その激しい刺激にも動かす事はできないまま。
かつて長門のバックアップという大役を担い、優秀な情報操作の要員として重宝された朝倉。
しかし、今となっては彼女は長門の住むマンションの一室に情報凍結されて保存された、一情報の集合体でしかない。
「はっ…はひゃひゃ!ひゃぁっ!くひっ!あっ…あははっ!や、やめ…ひひっ!くふっ!わ、腋ばかり……なんで腋なの!?」
朝倉は自身が選択した『急進の方策』を後悔していた。
涼宮ハルヒになアクションを起こさせるためには、彼女にとって大切な人物である『彼』に何らかの不利益な状況が起これば良い。
そのために最も効率的な方法は、彼の『死』だと結論づけた。
あの時、別の方法を考えていれば。
もっと、長門と共に方法を深慮していれば。
「くふふっ!はぁ…っ!あひゃひゃ!だ、だからくすぐりは弱いって言ってるのにぃっ!ひゃは!わ、腋は…!腋だけはやめて!お願いだからぁぁっ!うひゃひゃ!!」
朝倉は頭を左右に振り回し、その端正な顔の口元に涎を浮かべて。
固く閉じられた瞳の端には涙を浮かべながら、自分の右腋の下へ与えられる弱々しい舌先と唇による刺激に耐え続ける。
長門の舌が柔らかい皮膚の上にぺろりと這ったかと思うと唇が刺激されたばかりの皮膚をフニフニと刺激する。
唾液が皮膚を汚し、そのヌルヌルとした皮膚の上に走る柔らかな唇と舌先による優しい刺激は、朝倉の敏感な腋の下を狂わせようとするかのように踊り続けていた。
「ひひゃ!はっ……はひゃ!や…やめっ!あっ…あはっ!きゃっ!ふっ…ふひっ!やめっ……むひぃっ!」
動かそうにも動かせない両腕、逃げだそうにも両足の自由は奪い去られている。
仮に泣き叫んだとしても、自分の声はこの部屋の外に漏れ出す事は決してない。
この世界にいるはずのない人間、戸籍もなく、住民登録もない、そんな彼女は完全に孤立無援の存在となり果てていた。
誰も助けなど来ない。
ただ、この一室に拘束されて自分が一番苦手とする『くすぐり』を与えられ続けるだけの毎日。
ペチャペチャ……
腋の下の皮膚の上に走る長門の柔らかな舌先。
そこから塗り込まれる唾液が、舌先の粘膜との間で潤滑油のような働きをする。
ぬるぬるとした生暖かい物が敏感な皮膚の上を這い回るような堪らない刺激。
「ひひっ…ひゃははっ!も、もうやめ……っ!」
朝倉の体がくすぐったさにピクッピクッと小さく跳ね上がり始める。
我慢しよう、くすぐったいのを耐え続けようと思っていた強い意志。
しかし、長門の右腋の下への攻撃はそんな固い意志を打ち砕くようにニュルニュルと妖しげな感覚を押し込み続けてくる。
「ひっ…ひひっ……な、舐めないでっ!ふひゃっ!ひゃひっ!うひゃぁぁっ!もうダメっ…ダメなのっ!く、くすぐっ…くすっ…くくくっ!ひゃははっ!」
「……今日はここまで」
すっ……
長門の顔が朝倉の腋の下から引き上げ、朝倉はガクリと体をもたげると「はぁっ…はぁっ…」と激しく呼吸を始める。
腋の下から去った恐ろしいほどのくすぐったさ。
激しい笑い声を上げるまでには至らない、けれど、我慢できない甘い感覚。
この一室で、普段は情報凍結されて何一つとして変化のない毎日。
その中にあって、唯一の『平坦ではない』時間。
「……はぁっ……はぁっ…も、もうやめ」「情報凍結を申請する」
長門の言葉が朝倉の懇願を遮る。
途端、朝倉の体には激しい睡魔が襲い始めた。
ああ……彼女は落胆の嗚咽を漏らした。
また明日、凍結解除された自分に待っているのはくすぐったい時間。
昨日は足の裏を徹底的にくすぐられて悶えるように笑い狂い。
その前日には、脇腹を揉まれ続けて身悶えしながら転げ回った。
明日は……
「大丈夫、明日はもっと楽しい事をする」
長門の言葉をまどろみの中に聞きながら、朝倉は静かに眠りの深淵の中へ落ちていった。