!!18歳になっていない人は見ちゃダメ!!
こなた×ゆたか(らきすた)
新調したばかりのヘッドホンは左右の耳に慣れないが、それでも耳に届くクリアな音は今までの1,980円のそれと比べれば良い買い物だったかも知れない。
パソコンのミニジャックから伸びる黒いケーブルを指先でクルクルと巻ながら、音割れのない音楽を楽しむひととき。
デスクの上にはアニメのキャラがプリントされたマグカップ、中には温かなココアがたっぷりと注がれている。
部屋の中に充満するチョコレートのほろ苦さと甘い香り。
マグカップを手にとってクイとココアを口に含み、下の上で転がすようにして味を楽しんだ後、喉の奥へと流し込む。
それほど夜は更けていないと言うのに、今日はひどく冷え込んでいる。
カーテンの僅かな隙間から覗く窓は真っ白に結露して、北国で初雪の便りも聞こえ始めた12月。
学校からの帰り道には空はどんよりとして、今にもハラリハラリと白い物が舞い始めようかと思うほどの空模様だったが、夕ご飯の時に見た天気予報では雪の気配はまだまだ感じられないようだ。
ディスプレイには、とある動画共有サイト。
お気に入りの動画がないものかとマウスカーソルでリンクを辿ってはブラウザの「戻る」ボタンをクリックする。
右手で頬杖をつき、半分口を開いてディスプレイに向かって無数のサムネイルにカーソルを這わせて行く。
時折、気になる動画に辿り着いたのだろうか「おお……」と小さく声を漏らしたり、画面に顔を近づけるような仕草を繰り返しながら、ヘッドホンから漏れる僅かな音楽と時計の音だけが静かに時を刻んでいた。
やがて、それにも飽きたのだろうか、ヘッドホンを頭から外してマグカップに再び口をつけた彼女は、小さな体を椅子の背もたれいっぱいに大きく背伸びをする。
さて、パソコンを消してマンガでも読み始めようかと床に足を付けた頃合いを見計らったように、扉をトントンとノックする音。
「開いてるよー」
彼女は言いながら、マウスを操作してパソコンを終了させる。
コトンと小さな音を立てて引き戸が開き、薄暗い廊下には小さな黒い影。
しんと静まりかえった廊下から冷たい空気が流れ込む。
ディスプレイには「No signal」と白い文字が表示されてすぐに待機モードに切り替わり、ADSLモデムで点滅していた緑色のランプが、ふつと消えた。
「……」
「ゆーちゃん?」
何かを言いよどんでいるような雰囲気を背後に感じて、こなたは椅子をクルリと回して振り返る。
暗い廊下には照明の1つも灯されておらず、その暗闇に浮き上がるようにしてピンク色のパジャマ姿のゆたかが立っている。
忙しなく手を組んだり離したり、その顔は伏せられているが垂れた前髪から覗く瞳はあちこちにしきりに泳いでいるように見えた。
「ん?どしたの?」
こなたの問いかけにハッとしたように顔を上げるゆたか。
その顔は心なし赤く染まっていて、ぎこちない光りを湛えた瞳は戸惑うように泳ぎ続けていた。
「……具合悪いの?」
こなたが訝しげに尋ねるとゆたかは顔を横に振り、何かを言いかけたように口を開き、再び口を閉じる。
組んだ手をモソモソと動かして顔はますます赤みを増していく。
具合が悪い、というわけではないらしい。
こなたは、彼女の姿を見つめながら思う。
そうだ、最近の彼女は以前に比べて本当に体調を崩さなくなった。
以前は週に1、2回は具合が悪いと草創に自室に入って寝てしまう事も多かったゆたか。
しかし、ここ数ヶ月の彼女は、そんな病弱だった面影など微塵にも感じさせないほど健康な毎日を送っている。
一体、何が彼女の虚弱体質を覆させる要因となったのかは知るよしもないが、彼女の体質が変化したのと時を同じくして、ゆたかは同級生の少女と仲むつまじく帰る姿を何度か目にしていた。
あるいは、その同級生の少女と遊ぶ中で自然と体力が付いていったのかも知れない。
「あ、あの……お姉ちゃん……」
こなたが彼女の健康法について思い巡らせていると、ゆたかは薄い唇を僅かに動かして小さく言葉を紡ぎ始める。
「…あの…ね?」
「ん?」
ゆたかの顔がさらに真っ赤に染まっていく。
一歩廊下からこなたの部屋に足を踏み入れ、その足の動きで勢いを付けたのだろうか顔を上げると意を決したように。
「お、お姉ちゃんに相談が……あるんだけど……」
「相談?……おー、おおぅ!勉強、恋煩い、金銭がらみ以外ならドーンと任せなさい!」
勉強と恋煩いは、できる人とできない人がいて、こなたは『できない人』に自分が分類される事を良く承知している。
金銭がらみは……バイトをしているとは言え、出来る事なら今月は出費を抑えたい気持ちでいっぱいだった。
今月末に発売される、某アニメの限定フィギアセットを購入するまでは、何としても財布の中の15,000円は死守したい。
「うん……そ、そういうのじゃなくて……」
ゆたかは言いながら、後ろ手に引き戸を閉める。
ゴムを解いて流したままにしたセミロングの髪の毛がさらりと揺れて、微かに紅潮した首筋が覗く。
小さな体を包み込むピンクのパジャマには所々に赤いチューリップの模様がプリントされていて手足の袖には白いフリルが付いている。
緑色のスリッパをパタパタ奏でながら数歩だけ足を進めた後、ふと立ち止まった彼女は顔をゆっくりと上げた。
「こ、こ、こなたお姉ちゃんにしか……相談できない……話しなの」
まさか、秋葉腹でバイトをしたいからコスプレ喫茶を紹介して欲しいのだろうか?
あるいは、マンガやアニメに興味が出て、AKIBAカルチャーを今から学びたいとか?
はたまた、どうしても手に入れたいガチャガチャがあるのに、どうしても手に入らないからコツを教えてほしいとか?
……ちなみに、このガチャガチャ、正式名称はカプセルトレイという名前らしい。
こなたは様々な憶測を脳裏に巡らせるが、そのどれもが当を得ているとは言い難いような気がする。
「そ……その…す、すごく変な……変な相談なんだけど……」
こなたは、顔を真っ赤にして恥じらいの仕草を見せるゆたかの顔を見つめながら、こなたが小首を傾げる。
白い蛍光灯の明かりを受けた肌の赤さ鮮明に見える。
すでに耳まで真っ赤になったゆたかは、再び意を決したように顔をグイと上げると。
「……お、おおお、お姉ちゃん……ム、ムラムラした時って…ど、どうしてる?」
ゆたかの予想だにしていなかった発言に、こなたの頭の中は一瞬だけ思考する意欲を失ったように真っ白になる。
気まずい沈黙の後、思わず
「……はい?」
と聞き返してしまいながら、その言葉の真意を考え始めた。
(え、ムラムラ?)
「……ゆ、ゆーちゃん、ムラムラするの……ムラムラするの!?」
どのようなリアクションを返せばいいのか分からず、とりあえず受け取った言葉を反復してみたが、その言葉に驚いてしまった。
こなたの反応に、ゆたかの顔はいよいよ火を吹きそうなほど真っ赤に染まり、再び目を伏せてしまう。
「あ、いや……う、うん。そ、そりゃ……わ、若い体なんだし…ねえ?ムラムラの一つもするだろうけど……」
こなたは当惑しながら、脳の全思考回路をフル稼働させて返答の内容を探り始める。
ギャルゲーやエロゲーで、こういうシチュエーションは時折見受けられるが、総じてそれは『居候している側と、させている側』だったり『血の繋がっていない兄弟同士』だったり『一晩泊めた異性同士の若さ故の過ち』である場合はほとんどである。
よもや、同性の親戚から、こんな非現実的でNGワードに限りなく近い発言を受け取る事になろうとは……
極めて奇特な状況ではあるが、これを喜ぶべきか嘆くべきかいささか躊躇しつつも、こなたは懸命に平常心を取り繕いながら。
「ま、ままま、ま、まあ、じ、自慰行為とか……たまにするけどさ……」
そう言いながら激しく翻弄される心を落ち着かせようとマグカップに入ったココアに口をつける。
「……オ、オナニーだけで……す、済まない場合は……?」
「ブーーーッ!!」
口に含んだココアを吹き出してしまう。
まさか、ゆたかの口から「オナニー」という単語を聞く日がやって来ようとは。
その、あまりにもダイレクトな、例えるなら2アウト満塁の場面でピッチャーが放ったど真ん中の直球のような言葉を前にして気後れしてしまう。
「…そ、そりゃ……ねぇ?ゆ、ゆーちゃん?」
「わ、私……実は、お姉ちゃんと……かがみ先輩が……遊んでる所見ちゃって……」
「ちょっと待った!」
怒濤の展開に置いてきぼりを食らいそうになっていたこなたは、聞き捨てならない言葉を耳にした途端に声を上げてしまった。
「ゆ、ゆーちゃん!?見たの?え?ええ!!み、見た?いつ見た!?」
椅子から転げ落ちるように降りたこなたは足早にゆたかへ近づくと、その両肩を手で掴んでズイと顔を近づける。
クラスメイト同士で興じている秘密の遊び……自分たちだけの秘密と思い込んでいた、ちょっとだけエッチな時間。
その決して健全とは言えない行為の第一目撃者であるゆたかに、思わず強く詰問してしまう。
「…こ、こなたお姉ちゃん…目が怖いよ……っ」
見てはならぬ、知ってはならぬ国家機密を握ってしまったような扱いに当惑しつつ、ゆたかはポツリと囁くように小さな言葉を口にした。
「…と、時々……1階のリビングで…」
思わず、こなたの瞳から目を反らしながら告白する。
こなたはその言葉を聞いて、ハッとしたようなゆたかの肩から手を離すと、ボンッと頭から煙でも出るのではないかと思うほど顔を真っ赤に染める。
秘密の時間を見られていた事への羞恥心もさる事ながら、必死になってゆたかを詰問してしまった自分への恥じらい。
同時に、まさかとは思いながらも、ゆたかが自分に何を求めているのかも理解できたような気がして、その行為への気恥ずかしさも含まれていた。
リビングのソファの上、かがみとつかさを家に招いて繰り返される秘密の遊び。
家に誰もいない日を見計らって、二人に告げる合図の言葉は「今日は家に誰もいないから、おいでよ」。
三人の内一人がソファに寝そべって、残りの二人が上半身と下半身にそれぞれ分かれて怪しげな刺激を体へ送り込む。
決して健全ではないけれど、決してエッチな行為ではないと頑なに信じたい秘密の時間。
体中を刺激されている時は、ものすごく苦しくて。
でも、その行為が終わると同時に込み上げて来るのは『もっと続けて欲しい』という思い。
刺激する側になった時、ソファの上に寝転がった体のあちこちに刺激を送り込む時の皮膚の感触が楽しくて。
どんなにのたうち回っても、どれだけ懇願されても決して止める気にはならない、ちょっとだけ自分が有利な立場に立っているような錯覚を覚えさせる不思議な遊び。
日頃は見せない、かがみの大笑いしている表情が楽しくて。
つかさの顔をくしゃくしゃにして叫ぶような笑い声を上げ続ける姿が可愛くて。
誰も帰ってこないだろうと高を括っていた三人のすぐ隣の廊下を通っていたゆたかには、その『遊び』は一体どんな風に見えたのだろう?
「……わ、私たち、ゆーちゃん帰って来たの全然気づかなかった……」
と言いつつも、確かに無防備すぎた感は否めない。
玄関のベルが鳴らされなければ笑い声が充満している室内で耳を澄ませても、外の様子を察する事などできるはずもない。
「私、そっと帰って来て2階へ上がっちゃうから……」
ゆたかの潤んだ瞳がじっとこなたの大きな瞳を捉えている。
一体ゆたかが何を思っているのかを知る術はなかったが、ただ1つだけ無言の中に感じる事があった。
こなたたちが行っている怪しげな秘密の遊び。
それを目撃してしまった事で、ゆたかの中に芽生えてしまった表現できない不思議な感覚。
こなたたちが、数ヶ月前に初めて遭遇した『あの感覚』と同じか、それに限りなく近い不思議な欲求。
決して普通の感覚ではないけれど、その行為を受けている時は苦しくて仕方ないのに、また心が求めてしまう非日常的な欲望。
一度、自分で勝手に設けているボーダーラインを踏み越えてしまえば、すぐ近くに同じ趣向を共有する仲間たちがいる。
しかし、そのボーダーラインを踏み越える勇気を、なかなか前面に押し出す事ができない。
ただ一言だけ、ゆたかが求めればいいだけの事なのに。
それを、どのようにして ゆたかに伝えるべきか悩むこなただったが、彼女がその言葉を口にするよりも先に、ゆたかが静かに口を開く。
「……お、お姉ちゃん。あの……私…それ見てから……す、すごく…胸が……胸がとても苦しくなって……」
もじもじと両手を体の前で組み合わせる動作を繰り返しながら、上目使いでポツリポツリと細い糸を巻き取るようにして紡がれていく言葉。
「みなみちゃんに……時々…それを……あの、その……し、してもらったり……で、でもね。でも、夜になって一人で部屋にいると……変なの。体が熱くなって……」
キュウと音を立てるように肩をすぼめ、両足を固く締め付け合わせるように縮めて。
紅潮した頬と耳、目は今にも涙がこぼれ落ちるのではないかと思うほど憂いを含んで濡れている。
「……そ、それで…お姉ちゃんは…そういう時…ど、どうしてるのかなって……」
みなみという名前を聞いて、こなたは頭の中で背の高いスラリとして体格の1年生の女子の姿を思い浮かべていた。
時折、ゆたかが夕食の時に口にした『みなみちゃんの家で遊んでた』という言葉。
その時は、仲の良い友達ができて良かったと姉心に微笑ましく思っていたが、こうして話しを聞いた後では、ひどく卑猥な告白のようにすら思えてしまう。
自身の中で芽生えた欲求に対して能動的に行為を求め、すでに実践と応用は経験済みという点にも驚かされるが、あがり症で人一倍恥ずかしがりな彼女が自分の気持ちを実直に伝えてくるほどに、ゆたかの中で『その行為』が占める割合は大きなものになっていたのだろうか。
そして、その問いかけに対する答えは、ただ一つだけである事も、おそらくは理解しているに違いない。
「……ゆーちゃん、ちょっとだけ遊ぼうか?」
全てを理解したわけではないし、その受け答えが本当に正しいものであるかはこなた自身にも分からない。
しかし、ゆたかの体が求めている感覚を満たすためには、その方法しかない。
こなたの言葉に、ゆたかが顔を上げ少しだけ驚いたような表情を浮かべるが、すぐに。
「……い、いいの…?」
こなたは小さく微笑んで首肯する。
その遊びは、まるで子供同士の戯れのように一見しただけでは幼稚で、まるで冗談のようで。
しかし、一度経験すると抜け出せなくなる不思議な魅力を光彩のように放っている。
壁に取り付けられているエアコンのパネルを操作するこなた。
温度設定を僅かに上げ、天井から振る温風が微かに温かくなるのを感じた。
「ゆーちゃん、着替えて来てよ。部屋あったかくしたからさ」
こなたの言葉に、ゆたかの顔に悦びとも不安とも言えない表情が浮かぶ。
これから行われる行為は決して快楽に直結するものではないし、それを受けている時は苦しくて、時間がひどくゆっくり過ぎ去っていく。
おそらく、自分がどれほど泣き叫んでも途中ではやめてくれないだろう、その恐怖感と妖しげな刺激に対する期待。
季節は冬、雪が舞い降りてくるには少しばかり時期は早すぎる頃合い。
まどろみ始めた今日という一日も数時間で終わろうかという時刻。
こなたの部屋で始まろうとしている、その行為を隠してくれるように真っ白に結露した窓ガラスがカーテンの奥に静かに身を潜めている。
こなたがいつも使っているベッドに仰向けに寝そべって、両手首には白いタオルが巻き付いている。
タオルは手首の裏で交差してベッドの両端にある鉄製のフックのような所に結びつけられていた。
ベッドにこんなフックが元々備え付けられているはずもなく、あるいは、こなたが『その行為』のためにインターネットからでも購入したのだろうか。
ゆたかは自室で着替えた水色のキャミソールと白いミニスカートに身を包んでいる。
以前、みなみと教室で戯れた時のように下着姿でも良いのではないかとも思ったが、季節は冬。
まして、みなみの遠慮がちな指先からの刺激でもあれだけくすぐったかったのだから、どうにも地肌を晒してくすぐりを受ける……という事には若干の抵抗感を否めない。
こなたは半袖の白いTシャツと紺色のショートパンツ。
設定温度を高めにした室内はむしろ暑いぐらいに室温が上がり、長袖でいるとジンワリと汗が滲んでしまう。
寒さとは無縁の室内では、このぐらいの薄着の方が動きやすい上、汗をかきかき『その行為』を進めるのも、どうにも頂けない。
「ゆーちゃん、こういうのって、みなみちゃんとした事ある?」
こなたの問いかけに、ゆたかは脳裏にベッドに両手両足を縛り付けられ、様々な道具で腋の下を徹底的に責められた時の事を思い出していた。
「ちょ……ちょっとだけ…なら」
堪えて良いものか分からなかったが、顔を赤く染めながらもかろうじて言葉を返すゆたか。
こなたはニヤリと笑って何かを言おうとした様子だったが、そのまま口を閉じる。
「うーん、じゃあ、今日は10分ぐらいにしとこっか?」
言いながら、こなたはベッドに足を上げてくる。
一体どうするのかと不安で仕方がない様子のゆたかを眼下に見据えながら、ゆたかの両太ももの上にそっと腰を下ろす。
重さを与えないように、痛くならないように。
膝を立ててゆたかの太ももから腰にまたがる形で腰を落ち着けたこなたは、目をまん丸に見開いている彼女に小さくほほ笑みかけた。
「重かったり、痛かったりしない?」
「う、うん……」
「じゃあ、始めるよー」
こなたの言葉に、ゆたかがコクリと頷いて見せる。
ゆたかの小さな体の上にまたがって、上半身は薄い水色のキャミソールを纏っているばかり。
下半身には小さく白いミニのスカート、そこから露出する太ももと、こなたの膝が触れあっている。
素肌同士が触れあって、こなたは膝でゆたかの体温を感じている。
さすがに相手の心音までを読み取る事はできないが、太ももは室温以上の暑さを湛えていた。
こなたは再度、ゆたかの顔を見つめて微笑むと、ゆっくりと左指を彼女の体へと近づけて行く。
左指先をゆっくりと、まるで怯える子猫を撫でるように、静かに近づけて。
水色のキャミソールから伸びる白い腕、その手首にそっと人差し指の腹が触れさせると、ゆたかの小さな手がぴくっと揺れた。
あどけなさを残した顔には僅かに困惑の色が漂い、小さく眉をしかめたまま何かを言おうとしたのだろうか口を開きかけるが、唇は閉ざされたまま。
大きな瞳に浮かぶのは、何かを懇願するような哀しみの光りと、何かを求めるような期待に満ちた輝き。
大きく見開かれた瞳を見つめたまま、こなたは手首に立てた指先をゆっくりと動かし始める。
「お、お姉ちゃん……」
手首から人差し指を這わせながら、こなたは小さく微笑みを浮かべる。
「ゆーちゃんの肌、すごい綺麗……」
手首から前腕を這わせていく。
細く白い、少しでも力を込めれば壊れてしまうのではないかと思えるほど繊細な腕の上。
柔らかな皮膚の上に指先をじっくりと触れさせて、ゆっくりと撫でていく。
冬、室温は十分に上がっていて寒さは微塵にも感じられないが、まだ体に汗は浮かんでいない。
サラサラとシルクの布を撫でているような柔らかい感触を指の腹に感じながら、ゆっくりと指先を腕の曲線になぞらせながら。
「……こわい?」
眉をひそめて不安げな視線を送るゆたかに、こなたは静かに問いかける。
「……こ、怖くない……ちょっと不安なだけ」
「だいじょぶ、ゆっくりやるからさ……」
そう言いながら指先は上腕から二の腕に差し掛かる。
両手首を優しく包み込むように拘束しているタオル、強く引っ張れば簡単にほどけてしまうだろう結び目。
しかし、ゆたかは自分の腕にソロソロと這っている指先の感触に、反射的に腕を下ろそうとしてしまう自分の心を抑え込むように唇を固く結ばせる。
二の腕の柔らかな皮膚の上を、こなたの細い指の腹がジワジワと下っていく。
「くっ……」
顔をしかめて二の腕にソロソロと走る指先の刺激を必死に受け止めようとするゆたか。
しかし、二の腕の敏感な皮膚を僅かにでも刺激されるだけでも激しいくすぐったさが生まれ、笑いがお腹の中で沸々と沸き起こり始めてしまう。
「あっ…ひっ…!」
こなたの指先がゆっくりと二の腕を下っていく。
その小さな刺激が肌の下の神経を激しく揺るぶり翻弄する。
「うっ……ひゃっ!」
ピクッピクッ
小さな肩がくすぐったさに震え、必死に我慢しようとしかめた眉間には深くシワが刻まれる。
バンザイの姿勢のまま両腕は下ろす事ができない。
普段は決してバンザイの姿勢のまま拘束される事などありえるはずもなく、普段は人に露わにしない場所を露呈している恥ずかしさ。
それに加えて敏感な場所を容赦なく触れて来るこなたの細い指先。
羞恥心から敏感さを増した肌に加えられる人差し指によるくすぐりが、ゆたかの心をかき乱していく。
「ひゃっ!ひっ……ひは!く……お、お姉ちゃん……」
「ん?もうギブアップする?」
こなたの問いかけ。
ゆたかは頭を横に振り、ギブアップする事を否定すると唇を強く噛みしめる。
再びこなたの指先がゆっくりと二の腕を下り始め、固く結んだはずの唇から再び笑いが吹き出してしまう。
「ひっ!くふっ!ひはっ…!」
少しずつ、少しずつ二の腕を下り『その場所』を目指して動き続けている人差し指。
敏感な腕の付け根、そこはゆたかが一番苦手するデッドスポット。
果たして、そこを刺激されたらどうなってしまうのか……
何度かみなみにも刺激された事がある腋の下。
しかし、こなたの指先はまるでゆたかの弱点を知り尽くしているかのようにクネクネと蛇行して動き敏感な二の腕をじっくりと刺激して回っている。
「えー、次は腋の下ー、腋の下ー」
こなたが電車の車掌を真似たのだろうか、似ていない口調でそんな事を言い始める。
ぴくっ
ゆたかの体が強ばり、無意識に右腋の下に力を込めてしまう。
少しずつ、じわじわと腋の下へ近づいていく人差し指。
やがて……
こなたの指がバンザイの姿勢のまま大きく露出している腋にスッと触れる。
こなたの指先に、今までとは比較にならないほど柔らかく、やや汗ばんだ熱い感触が広がった。
「きゃっ!」
ゆたかの可愛らしい小さな悲鳴。
敏感な腋の皮膚を触れられて堪らない感覚が流れ込んでくる。
ほんのちょっとだけ指の腹で触れられただけであるにも関わらず、思わず身をよじって敏感な場所に加えられる指先の感触から逃れようとする。
「ほれっ」
ムニュッ
こなたが楽しそうに腋の下の皮膚に指先を押し込む。
柔らかな皮膚が沈み込み、敏感な肌に指先が潜り込む感触。
「ひゃは!」
またしても可愛らしく身をよじる。
「うーむ……なかなかの弱さでいらっしゃる……」
ムニュムニュッ
こなたが続けざまに腋の下に指を突き立てる。
柔らかな皮膚に沈む指先、弱々しい刺激でもゆたかにとっては我慢ならない激しい攻撃でしかない。
「あはっ!お、お姉ちゃん……」
「ん?」
こなたはゆたかの言葉に応じるような素振りを見せながら、腋に指先をグイッと押し込み柔らかな皮膚を摘むような動作でモゾモゾと刺激し始める。
体の中でも特に敏感な腋に対する刺激に、ゆたかがビクッと体をのけ反らせた。
「ひゃは!お、おねえちゃ…ふぐぅっ!」
予想以上の反応が返ってきて、こなたは楽しくて仕方がない。
腋の下に沈み込ませた指先をクニクニと優しく動かしながら、開いていた右手を彼女の首筋に伸ばす。
やや汗ばんだ首筋の皮膚に触れた途端、ゆたかは「くふっ!?」と笑い声を上げて首をすぼめる。
しかし、顎と首筋に挟まれながらも指先は未だに自由に動かすことができる。
僅かな隙間の中、首の敏感な皮膚をサワサワと指先で優しく愛撫するように撫でながら、左指先では腋の下をモニョモニョと揉むように刺激し続ける。
「きゃっ!ひゃぁっ!く、首はっ……くはっ!お、お姉ちゃんっ……ひゃっ!」
首筋の肌と腋の下の肌を同時に刺激される。
敏感さを増して行く皮膚の上、むず痒い感覚を次々と送り込むために指先をこちょこちょと動かすと面白いようにゆたかの体が反応を示す。
「ふっふっふっ……相当弱いみたいだねぇ」
自分の指先がちょっとでも触れただけで、ゆたかが可愛らしく嬌声を上げて身悶える。
それが堪らなく楽しくて、次々と腋の下と首筋に指先を這わせてしまう。
「ひゃは!お、おねえちゃっ……ひはっ!あぁっ…わ、わきっ…!くふっ!わきダメっ!」
「ほう……」
ゆたかの言葉に、こなたの心の中に悪戯心が芽生えてしまう。
腋の下でクニュクニュと動かしていた人差し指、その敏感な皮膚の上に5本の指をスッとあてがう。
「あっ…あひっ!わ、わきダメだって言ってるのにっ……くっ…くひゃっ!」
5本の指先が触れた腋の下、ゆっくりと指先を動かしてみる。
柔らかな皮膚を指の腹に引っかけるように。
ゆっくりと、じっくりと。
まるで摘み上げるように優しく撫でただけでゆたかの体がビクビクと激しく震え始めた。
「ひゃは!ちょ…!おねえちゃっ!くっ!あひっ!きゃっ!く、くすぐったいよっ!」
「つ、つかさより弱い……?」
あまりの反応に、こなたは思わず指先の動きを止める。
腋の下へ与えた軽い刺激、まだ激しく指を動かしているわけでもないのに彼女の体は弾けるようにのたうち回り、コロコロと可愛らしい笑い声を口から吹き出させている。
初めから激しい刺激を与えて、くすぐりに対する嫌悪感を持たせてはいけない。
そんな思いが、こなたの中で『もっとくすぐりたい』と嘆願する本能を抑え込む。
例え10分という短い時間でも、ここは慎重にゆたかに対して刺激を与えて行かなくてはいけない。
「うーん……腋の下、ちょっとキツい?」
「はぁ……ちょ、ちょっとだけ……はぁ……」
しかし、激しく息を切らして額に汗を浮かべる彼女の姿を見た限りでは決して『ちょっとだけキツい』という様子ではない。
残念ではあるが腋の下への責めは次回の楽しみとして取っておいて、次に脇腹を責めてみる事にする。
「うーん……最初から腋の下はキツかったかもね。じゃあ、ここは?」
こなたは言いながら腋の下からそっと指先を離した。
ほっとした表情を浮かべるゆたか。
口では大丈夫と言っていても、腋の下の敏感な皮膚へのくすぐりはかなり負担だったのだろう。
それは少しずつ慣らして行けばいいだけの事、最初は遊びのような感覚でくすぐって少しずつ刺激を激しくして行った方がお互いに長く楽しめる。
こなたは腋の下へのくすぐりに若干の名残惜しさを感じつつも、脇腹へ指先を近づけて行く。
ゆたかの上に馬乗りになっている体の下、腰の辺りに指先をそっと触れさせる。
キャミソールの布地の上からの刺激、ピトリと指の腹を脇腹に触れさせると「うっ」と小さな声を漏らすが、明らかに腋の下ほどの激しい反応は返ってこない。
「我慢できそう?」
「う、うん……ここなら」
そう言いながらも、触れている指先がむず痒いのだろうかゆたかは脇腹をしきりに気にしている。
直に素肌に触れるわけではないのだから腋の下よりもくすぐったさは弱まるだろうと思っていたが、ゆたかの体は想像より遙かに敏感なのかもしれない。
「じゃあ、始めるよ?」
「う、うん……」
ゆたかが首肯するのを見届けてから、こなたは人差し指を立てると。
つんっ
両方の脇腹の皮膚をキャミソールの布地越しに押し込んでみる。
「ひゃは!!」
激しく腰を振り、顔をしかめて全身でくすぐったさを表現するゆたか。
想像以上の反応ではあったが、腋の下に比べれば決して激しい反応ではない。
安心して良いものやら、手加減すれば良いものやら判断が難しいところだが、とりあえず続けてみる事にする。
両脇腹に食い込ませていた指先を引き上げると、左脇腹の10センチほど離れた場所に人差し指を立てる。
それに続いて、右脇腹に向けて人差し指を立てた手を近づけて……
「ほれ、ツンッ」
「ひゃあっ!」
右脇腹にこなたの指がグニュッと突き刺さる。
敏感な肌に指が沈み込む激しい感覚、薄い皮膚と肋骨が擦れ合う感触にゆたかが体を大きくよじらせる。
しかし、よじって大きく腰を左に曲げた先には、こなたの右手が待ち受けている。
クニュッ
「くひぃっ!」
左脇腹に自らこなたの指先を食い込ませてしまい、意図しない刺激が生み出される。
その刺激から逃れようと反射的に身をよじると、今度は左脇腹に指先が食い込む。
「はひゃっ!」
自らの行動によって脇腹をその毒牙の餌食に晒す事になり、再び体をよじれば、そこには再び指先が待ち受けている。
少しずつ激しくなっていく体の動き、こなたは怪しげな微笑みを浮かべながら少しずつ指先をゆたかの体へと近づけて行く。
僅かに身をよじっただけでも脇腹へ襲いかかるくすぐったい人差し指の刺激。
細いウエストに突き刺さる指先は皮膚の下の神経を激しく揺り動かし、激しいくすぐったさを次々と生み出していく。
「ふひゃっ!きゃっ!お…っ…くふっ!おねえちゃ…ひゃっ!?あふっ!くはっ!?」
しきりに腰を左右に動かして、少しずつ自分の体との距離を狭めていく指先の気配を生々しく感じながら。
ゆたかは次々と両脇腹へ襲いかかる指先の攻撃に全身をビクッビクッと跳ねさせるように反応する。
その反応の1つ1つが脇腹へ加えられる新たな刺激を生み出し、くすぐったさが少しずつ強まってしまう。
「ふっふっふっ……触れちゃおっかなぁ?」
こなたの指先が、ゆたかの体のラインに沿うように配され僅かにでも腰を動かせば脇腹に指先が突き刺さってしまう。
何とかして体を動かすまいと努力するが脇腹に指先がグニッと押し込まれると勝手に体が仰け反り、体を大きくよじれさせてしまう。
我慢しようにも脇腹へ流し込まれる刺激に反応する体は、自分の意志だけでどうにかなるものではない。
「きゃっ!ひゃふっ!くひっ!はっ……はうぅッ!やめっ…ぇひっ!」
可愛らしく笑い声を上げながらクネクネと体をよじらせて、ベッドの上でくすぐったさにのたうち回る。
ベッドのシーツの上、体を左右に激しくばたつかせ、両脇腹へ加えられ続ける連続的な刺激。
耐えようにも勝手に反応する体を押さえ込む事もできず、こなたの指先を自分の意志とは関係なく自らの行動で脇腹へ押し込んでしまう。
「ほーら、ぐにぐにぐにぃ……」
こなたの言葉に続いて、両脇腹に指先が触れてくる。
5本の指先が細いウエストにグッと当てられて、薄い皮膚の上をモゾモゾと刺激し始める。
キャミソールの薄い布地の上から、少しだけ強めに指先が脇腹に食い込みコロコロと脇腹を転がすようにくすぐられる感触。
脇腹をツンツンと突っつかれ続けて敏感さを増した肌に加わった新たな攻撃。
「ひゃぎぃぃっ!ふひゃぁ!くっ…くふふっ!き、キツいよッ!うひゃっ!それキツいってばぁぁっ!ひゃふっ!」
グニグニと脇腹を襲う10本の指。
薄い布地の上から爪を立てるようにして指が食い込んでモジョモジョと脇腹を絶え間なく刺激していく。
脇腹をツンツンされていた時とは比較にならないほどのくすぐったさが溢れ出し、ゆたかの口の中に次々と笑いを生み出していく。
両腕はタオルで拘束されたまま、腰に馬乗りになったこなたの体重で下半身を激しくばたつかせても無駄な足掻きにしかならない。
「もにょもにょー」
こなたの指先の動きが細かく振動するような動きに変わる。
脇腹をグニグニと揉み回していた指先がプルプルと皮膚を震わす刺激に変わり、ゆたかの体が大きく跳ね上がった。
「ひゃ!ひぎぃ!む、無理ぃ!無理!くひゃっ!?無理だっておねえちゃッ……ぷひゃっ!ほ、ホントにムリだってぇぇっ!」
脇腹に当てられた10本の指が激しく振動し骨と皮膚を激しく振動させていく。
笑い転げたくても両手は拘束されたまま、体も自由に動かすこともできない。
腰を激しく動かす事はできるが、動かせば動かすほど脇腹に指先が食い込む結果となってしまう。
「ふぎぃぃっ!ぎひひひっ!ストップ!ストップ!!無理ぃぃっ!あひゃっ!ひゃひっ!キツいって!ホントにキツい!お姉ちゃんキツいぃぃっ!!」
笑いが腹部を圧迫し、瞳から涙が流れ出す。
頭を左右に振り回し、口から流れ出す唾液が頬にまで飛散していた。
短めの髪の毛は汗でじっとりと濡れていて、前髪が額や頬に貼り付く。
「もうダメだってばぁぁぁ!!あっ…あぎぃぃっ!ふぁひゃひゃひゃ!くすぐったいよ!ホントにくすぐったいんだってばぁ!!あひゃ!ひゃぁぅぅ!!」
「ふっふっふっ、よかろう。残り30秒、こなた流くすぐり奥義を耐えきってみるがいいっ!」
こなたは言いながら、脇腹のある一点に指先を揃えて押し込み、指先をグニグニと激しく動かし始める。
脇腹の皮膚と肋骨がプルプルと激しく揺さぶられ、今までにない激しいくすぐったさが発生する。
「きゃああぁっ!!」
ゆたかの口から激しく悲鳴が上がり、脇腹に襲いかかる指先の攻撃にすぐに笑いが込み上げる。
笑いを必死に堪えようと腹に力を込めるが、それも一瞬だった。
「むひぃぃぃっ!!あっ…あひゃひゃひゃ!!こ、これぇぇっ!!くはははは……!す、すごいぃぃッ!?」
脇腹深くに潜り込んだ指が繰り出す振動、その忙しない激しい動きにビックリした様に顔を上げ、抑え込む間もなく口からケラケラと笑い声が迸る。
背中をのけ反らせて両脇腹から流し込まれる地獄の責め苦に両足をベッドにバンバンと叩きつけ、両腕は縛り付けているタオルを強引に引っ張り結び目がほどけ始める。
「ひゃははは……!お願いぃぃっ……ふぎぃぃぃっ…ひっひっ…!ふぎゃぁはははは!すごいぃっ……くぅぅっ!」
瞳を大きく見開いてこぼれ落ちる涙や、口から溢れる唾液になど構う余裕もない。
ボサボサに振り乱された髪の毛を、さらに激しく振り回し。
全身からくすぐったさと激しく体を動かす事で汗が次々と流れ出す。
「もうっ…ひゃははははっ…!もう30秒!!ぎぃぃっ!あははっ!あはははは!!もう……もう30秒経ったよ!!くひひっ!ひゃひぃぃっ!!」
「あー、そう言えばそうだっけ」
めちゃくちゃにかき混ぜられていた脇腹から指先が遠ざかる。
脇腹を刺激され続け、くすぐったくても逃げる事も出来ず笑い狂い続ける10分間。
地獄のような時間が終わりを告げ、ゆたかの体が、こなたの体の下でビクッビクッと小さく痙攣している。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
全身汗まみれ、顔は唾液と涙でぐちゃぐちゃになり髪の毛はボサボサに乱れ散っている。
前髪が貼り付いた額、虚ろな瞳がその髪の毛の隙間から僅かに覗いていた。
水色のキャミソールにも汗が滲み、あと一歩でほどけそうなタオルで束縛された腕はピクピクと細かく震えている。
顔にはくすぐりによる笑いが未だに浮かび、口からは唾液の筋が流れていた。
「はぁ……はぁ……く、苦しかっ…けほっけほっ……はぁ……はぁ……」
恍惚とも虚無とも異なる、満たされたような物足りないような表情を浮かべベッドにうな垂れ沈んでいるゆたか。
温かな部屋の中にはゆたかの汗の香りが充満し、笑い声に震えていた壁は静寂を取り戻そうとしていた。
「どうだった?」
いつの間にか、ゆたかの右手を拘束していたタオルは解かれて、左手を縛り付けているタオルに指をかけて解こうとしているこなた。
全身から流れ出す汗と、体の中に残る火傷しそうなほど熱い感覚の余韻に浸りながら、ゆたかはコクコクと頷く事しかできない。
「そうかそうか、ならば今度は、“ひいらぎーず”も召喚して、さらに楽しもうではないか」
と言いながらも、こなたの顔も真っ赤に染まっている。
いつもは清楚で病弱な印象が強かったゆたか。
自分よりも小さな体を一生懸命に震わせて、自分の指先が流し込むくすぐったさに身悶えを繰り返し。
ベッドの上で可愛らしく転げ回って笑い狂うゆたかの姿。
「ふっふっふっ……楽しみじゃのぅ…って大丈夫?」
こなたがニヤニヤ笑いで語りかけた時には、ゆたかは深い寝息を立て始めていた。
ボサボサに額に貼り付いている髪の毛をそっと指先で解いて、汗に濡れた髪の毛を手ぐしで軽く整えてあげると、ゆたかはむにゅむにゅと口を動かして
「お姉ちゃん……ありがとぅ……」
小さな言葉、それはまどろみの中で必死に表した感謝の気持ちだったのか、あるいはただの寝言だったのかは分からない。
ただ、こなたは『遊び』が新たな参加者を迎えて、さらに楽しいものになるであろう喜びと。
可愛らしく寝息を立てるゆたかが、これからどれだけ笑い狂うのかを夢想しつつ、カーテンの奥に潜む曇ったガラスを見つめる。
「……今年、雪降るのかな」