こちょぐりにーた PACKED

blogで書いたくすぐり小説、ここで合体ひとまとめ。探す手間が省けます。

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!!18歳になっていない人は見ちゃダメ!!

みなみ×ゆたか(らきすた)

頭の奥がジンジンと熱く、全身が熱気に当てられたように火照っている。

通い慣れた教室の中、放課後も過ぎて窓辺には浅く色づいた夕焼けの日差し。

自分の机に腰をかけて、ゆたかは静かにみなみの瞳を見つめている。

教室の引き戸には施錠し、教師達は職員会に参加しているため当分の間は戻って来ない事は数日前に確認済み。

まさに万全の準備の中、ゆたかとみなみは二人っきりで夕暮れ近づく教室の中、じっと佇んでいた。

 

「……いいの?」

 

ショートの髪の毛を僅かに傾けて、みなみが確認をする。

ゆたかから見れば、かなり背が高い彼女の顔は仄かに紅潮しているように見えた。

 

「……う、うん」

 

コクリと首肯して小さなツインテールを揺らした彼女は、大きな瞳に期待と不安を織り交ぜるようにして、みなみに静かに視線を送る。

一瞬、二人の視線が交わり、みなみは思わず目を反らしてしまう。

 

「あ、あの……みなみちゃん…?」

 

どこか申し訳なさそうなゆたかの言葉。

 

「なに?」

 

いよいよ顔を赤くさせて、ゆたかが恥ずかしそうにみなみの顔を見上げる。

夕陽に橙色に染まった制服、その日差しに少しだけ眩しそうに細めた瞳に憂いすら感じて、みなみは自分の頬が熱くなるのを感じていた。

 

「…そ、その、……い、いやだったら……やめても…」

「そんな事ない」

 

ゆたかの言葉を遮りでもするかのように、みなみは首を横に振った。

そんな自分のあまりの反応の早さに、ハッとしたように顔を上げて気まずそうに視線を泳がせる。

ゆたかは少しだけ驚いたような顔をした後、クスクスと小さく笑った。

その小さな笑いの意味を感じ取ったみなみも、薄く微笑みを返す。

二人の間には、それ以上の会話は必要ないように思われた。

 

ここまで用意周到に、教師の職員会議の日程まで調べ上げて、二人きりの教室を演出した事には理由がある。

それは誰にも言えない二人だけの秘密の行為のため。

 

ゆたかの心の中に漂うのは、自分でも理由が分からない不思議な感覚。

今までに感じた事がない、不可解で奇っ怪で、でもとても甘くて楽しそうな感覚。

その感覚に目覚めたのは、本当に最近の事。

そう、あれは……

 

 

 

 

 

 

数週間前のある日、学校から帰ってくると玄関にはこなたの靴と、もう1つ小さな靴。

誰の物だろう?と疑問に感じつつ、彼女は『ただいま』と言いかけながらリビングへ足を進め、そこから響いてくる『あの声』を聞いた。

 

「あははははははははッ!あははははははははッッ!!」

 

こなたの笑い声、それも今まで聞いた事もないほど激しく、大きい。

何か面白いテレビでも見ているのだろうかと、そっとドアの隙間から覗き見た。

 

ソファに寝転んだこなたと、その上に馬乗りになった、こなたの友達であるかがみ。

こなたは日頃から好んで着込んでいる紺色のタンクトップと黄色いショートパンツ姿。

そんな彼女の両腕を押さえ付けて、制服姿のかがみが、こなたの体に顔を寄せている。

一体何をしているのだろう……?

そう思いながら、いけない事だと思いつつも沈黙のまま様子を伺っていると、かがみの顔が動く度に、こなたの口から激しい笑い声が迸っている事に気づいた。

耳を傾けると、そこからは『ペチャ、ペチャ』と水っぽい音。

 

「ぎひひひひひッ!はぅっ!?か、かがみぃぃっ……ひひひひひひひひ!!」

 

大きく口を開いて、目を大きく見開いたこなたが笑い声を吹き上げる。

よくよく見ると、かがみの顔はこなたの右腋の下に埋まるように収まっていた。

大きく露出した腋の下の上でピンク色の舌先がペロペロと這い回っている様子が見て取れる。

 

「くふふふっ!か、かがッ……!あははははははッッ!かがみぃぃぃっ!!」

 

敏感な腋の下を舌先で舐め回されて。

それも地肌を舐められているのだから、相当にくすぐったいはずなのに。

こなたの口からは怒りの言葉も、拒絶の言葉もなく、ただ笑い声と、かがみの名前だけが発せられている。

どれだけ腋の下を刺激され続けているのだろうか、こなたの紺色のタンクトップには所々に汗が染みを作っている。

その顔には幾筋もの汗が流れ出して、その瞳からは涙がボロボロと溢れていた。

開きっぱなしの口元には涎が流れて、両足はソファの上をバンバンと蹴っているが無駄な足掻きにしかならない。

 

ペチャペチャペチャ……

 

おいしいミルクを飲む猫が立てる音のように、かがみの下が、こなたの腋の下を舐め回す音が響く。

こなたの小さな体がくすぐったそうに震えて、長い髪の毛が振り回されてソファの上に乱れ放たれる。

 

「あははっ!あははははははははは!か、かがみぃぃっ!!ぎひひっ!?くひひっ……くはははははははははは!!」

 

まるで容赦のないかがみの舌により責め苦に、こなたが笑い転げる。

その顔は本当に苦しそうなのに激しい笑顔で歪んでいた。

ゆたかは二人の姿を見つめながら、その体を動かせない。

ただ、いつまでも留まっているわけにも行かず、まして自分がここにいる理由を二人に尋ねられたら、どう言葉を返せばいいのか分からない。

足音を立てないように、ゆっくりと立ち去り、自室へ向かうべく階段を忍び足で上っていく。

この時ほど自分の体重の軽さに感謝した時はない。

床はギィと軋みを一度も立てる事なく、自室に無事到着した彼女はベッドにボフッと沈むように倒れ込んだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

1階で行われている行為、それによって発せられる笑い声は2階までには届いてこない。

静寂に包まれた室内で、彼女は自分の呼吸がひどく荒くなっている事に気づいて、顔を上げた。

 

「……………」

 

沈黙の中で、自分が見た、こなたとかがみの行為を思い出していく。

 

「……こ、こちょこちょ……?」

 

言葉に出してみて、くすぐりという行為に対する自分の認識が、まるで異なったものになっている事に気づき驚いた。

ほかの十数分前までは、くすぐりという言葉すら忘れていたのに。

こなたとかがみの二人の行為を見なければ、ゆたかにとって『くすぐり』という行為は子供達の遊び程度の、他愛もない戯れとしての意味しかなかったのかもしれない。

……しかし。

 

 

 

 

 

あの日から、ひどく胸が切なくなる事がある。

それは、自分でも言葉にできないほど抽象的で曖昧な感覚だった。

全身が火照って、自分の体の所々がむず痒くなるような不思議な気持ち。

その理由は分かっているのに誰にも言い出せない。

 

もし誰かに言ったとしたら、どんな顔をされるだろう。

おそらく、自分の言葉を聞いた相手はすべからく『頭がおかしくなった』と思うに違いない。

 

しかし、日に日にゆたかの心の中で大きくなっていく感情。

それは彼女の若い体と、健康な精神に後押しされるようにして急激に心を支配して行くようですらあった。

その感情は『誰かにくすぐられたい』。

 

 

切なさは日を追う毎に増していくばかり。

自分の願いが決してノーマルなものではない事も分かっていた。

インターネットで調べてみようと思っても、どこをどう探していいのか分からない。

普段は気丈に振る舞っていても、自分の部屋に戻るとベッドに体を沈めてぼんやりする事が多くなっていった。

 

学校では、そんな自分の思いなどおくびにも出していないつもりだったし、周囲も自分に気遣うような言葉はなかった。

しかし、心のどこかは常にぼんやりとしていて、夢見心地であったのかもしれない。

そして、みなみでなかったら、ゆたかの小さな変化になど気づきもしなかったのだろう。

 

ある日の帰り道、ゆたかの横を歩いていたみなみは、そっと尋ねてみた。

 

「……私に何か相談に乗れる事があれば」

 

いつも唐突に、みなみは言葉を発する。

バス停まで歩く途中の交差点、赤信号を待つ二人の間に通わされたコミュニケーション。

行き交う車の群を目で追っていたゆたかは、ビクッと肩を震わせると慌ててみなみの顔を見上げてから、しまったと思った。

誰にも悟られていないと思っていた。

自分でも努めて悟られないようにしようと思っていた。

 

「な、なんで?そ、そんな事ないよ?」

 

慌てて切り返し、心の中で落胆の声を上げる。

やはり、言う事はできない。

みなみに対して仮に告白したとして、みなみはどんな顔をするのだろう?

もしかしたら気持ち悪がられて、クラスメイト以上の親密な関係すらも崩れてしまうかもしれない……

そう思うと恐ろしくて二の句をつげなかった。

 

自分が哀れで、自分に腹立たしくて、そんな思いを逃すために空を仰いだ。

夏の残り香を思わせる蒸し暑さの中、空には僅かながら早くなった夕焼けが青空と混ざり合い、そこを一羽のトンビが心地よさそうに駆け抜けている。

あのトンビのように、何も思う事もなく空を馳せる事が出来るなら、自分のこの気持ちを少しでも和らげる事ができるのかも知れない。

そんな事を思いつつ、トンビに羨望の眼差しを向けていると、みなみは。

 

「……嘘はだめ」

 

みなみの言葉に、彼女はハッとして視線を落とした。

信号機はいつの間にか青に変わり、周囲の人々が歩き出している。

 

「う、うそなんて……」

 

嘘をつくために嘘をついた。

青い信号に吸い込まれるようにして歩む人々が、制服姿の見つめ合う二人に不可思議な物でも見るかのような視線を送っている。

時間に取り残されたように、通う人並みに飲まれる事もなく。

ゆたかの視線は宙を彷徨うようにして。

一方、みなみの視線は愚直なまでに、ゆたかの大きな瞳に向けられている。

 

ああ、この目だ。ゆたかは思う。

この眼差しは入試の時に彼女に向けられた、あの眼差しとちっとも変わっていない。

 

やがて信号が点滅し赤に変わり、再び車が走り出す音が聞こえ始めた。

みなみは静かに彼女を見つめていたが、唇に薄く笑みを浮かべ首を横に振った。

 

「私にも言えない事?」

 

 

 

喧騒から離れ、二人は人影もない小さな公園のベンチに座っている。

夕暮れ時は間近に迫っているようで、先ほどまで空色に橙色を混ぜた彩りの空は、そこに紺色を仲間に加えて夜の面影を感じさせ始めていた。

トンビは巣に戻ったのだろうか、そこには帰宅を急ぐようにカァカァと鳴きながら南の方角へ飛んでいくカラスの影を遠くに望むばかり。

涼しげな風が吹き抜けて、木の葉がザァッとざわめく音が辺りに響き渡る。

日中の猛暑に忘れがちになる秋の訪れは、夕方を過ぎる頃合いになると自己アピールを始めるらしい。

 

「……ゆたか」

 

みなみは小さく彼女の名前を呼ぶ。

その言葉に肩を小さく震わせて顔を上げ、再び目を伏せてしまう。

誰もいない公園、辺りは暗がりを増して闇のカーテンが少しずつ色を濃くしていく。

みなみ以外の誰にも話しを聞かれる事はないかもしれないが、どのように説明すれば良いのかが分からない。

ひどく深い沈黙の中、みなみは静かに言葉を紡ぎ始める。

 

「もし、言えない事なら、言わなくていい。でも……」

 

公園にはベンチの他には小さな滑り台と砂場。

以前は何か遊具があったのだろうか、コンクリートが張られた正方形の敷地には白いプランターに花が寄せ植えされていた。

公園の外、道路に配された電柱に取り付けられた蛍光灯がカチカチと音を立てながら青白い明かりを灯す。

 

「私は何でも聞く。どんな事でも。私にできる事はすべてする」

 

「……み、みなみちゃん」

 

「親友だから。ずっと一緒にいると約束したから」

 

みなみは言い終わると、再び薄く微笑んだ。

深紅の色合いを残した西の空には太陽の姿はなく、空には幾つかの星が瞬き始めていた。

蛍光灯の明かりを浴びて、みなみの白い肌が透き通るように見えて、ゆたかはドキリとする。

同時に自分が今まで何を悩んでいたのかと、少しだけ自分を自嘲していた。

聞いてくれる人は最初からいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ゆたか……?」

 

あの日の夕暮れに見た深紅の夕焼け色とは異なり、浅黄色に染まったみなみの顔を間近に感じて、ゆたかは少しだけ驚いたような目を何度か瞬きさせる。

二人だけの教室、人の気配がしない校舎の中。

時計の秒針が進む音だけが妙にくっきりと響き渡り、ベランダを吹き抜けていく、いつもより幾分か強く感じる風の音が耳についた。

泡立つように落ち着かない時間だけが過ぎ去っていくが、ゆたかの心には焦りや迷いはない。

誰にも話せず相談すらできないと思い込んでいた、自分の中に芽生えた異質な感覚を受け止めてくれた人が目の前にいる。

それを思うだけで心強く、そして自分の体にこれから行われようとしている行為に、期待と不安が高鳴っていく。

ただ、気になる事は。

 

「みなみちゃん……ほ、ほんとに、よかったの……?」

 

トクン、トクンと心音が胸の中で大きくなる。

その問いかけをしながら頬が熱くなるのを感じて、慌ててみなみの瞳から視線を移した。

 

「?」

 

小首をもたげて、みなみの短い髪の毛がサラリと揺れる。

そのキョトンとした表情に、ゆたかの羞恥心がますます刺激され、頬から耳にかけても熱くなっていく。

 

 

あの日、夜の帳が降りた公園のベンチの上。

恥ずかしさと、もしかしたらみなみに嫌われてしまうかも知れない、今のままの関係を続ける事ができなくなってしまうかも知れない。

そんな恐怖と、自分を必死に受け止めてくれようとするみなみの気持ちが嬉しくて、涙がポロポロとこぼれ落ちた。

涙の中で嗚咽を混ぜないように唇を何度も噛んで口に出した言葉。

みなみを信じて、すっかり胸を借りてしまう勢いで、必死に言葉にした自分の気持ち。

 

あの時口にした言葉を、そのまま復唱する。

 

「み、みなみちゃんに……くすぐられたい…って……」

 

そこで一つ呼吸を置いて、泳がせていた視線をみなみの瞳に戻した。

 

「……みなみちゃんは……ほ、本当に…良かったの……?」

「うん」

 

自分の言葉の後に、一瞬の間があったらもしかしたら涙が溢れ出していたかも知れない。

みなみは自分のために無理をしているのではないか、笑顔の裏側で小さく苦笑いを浮かべているのではないか。

そんな不安は、自分の言葉に続けて一瞬の間もなく返された首肯に和らげられる。

 

ますます顔が赤くなっていく。

頭の奥が痺れるみたいにジンジンとうずいて、全身の肌がとろけてしまうほど火照っていく。

エアコンが利いて肌寒いほどの教室の中なのに、制服の下にはじんわりと汗が滲み始めていた。

 

「……うぅ」

 

すでに相手の気持ちも聞き終わり、後はその行為を始めるばかり。

しかし、いざとなってみると一体どんな言葉で始まりを告げれば良いのだろうか。

機関車の運転席に乗り込んだは良いものの、出発の仕方は知りながら汽笛の鳴らし方を知らない運転手のようにジリジリとしていると、みなみが小さく囁くように言った。

 

「はじめよう」

 

 

 

制服の上着を脱いで机の上に置いたゆたかは、せめて私服の1つでも持ってくるべきだったと後悔していた。

厳しい残暑は肌寒さすら感じさせないが、制服を脱いだ後、そこに着替える物がない状況は彼女の心を不安にさせる。

しんと静まりかえった校舎の中、こんな姿を誰に見られるというわけではなかったが、決して健全とは言えない行為を控えて心の中に背徳の気持ちが広がっていく。

小振りな胸を隠しているピンク色のブラジャーは、そこに巻かれているだけのようにしか見えないが、彼女はしきりにホックがしっかりと掛かっているか確認してしまう。

 

トクン、トクン、トクン

 

胸の中から飛び出してしまうのではないかと思うほど心臓が勢いよく鼓動している。

しっかりとホックがかみ合っている事を確認し終え、ゆっくりと振り返った彼女は、みなみの顔を見つめようにも見つめる事ができず目を伏せてしまう。

恥ずかしさで体がぷるぷると小さく震えているのが分かる。

鼓動に合わせて呼吸も少しずつ荒くなっていたのだろうか、唇が乾いていた。

全身に温カイロで熱せられたように熱く、全身から汗が噴き出していくのが分かる。

 

「……えへへ」

 

どうしたら良いのか分からず、とりあえず笑ってみる。

そして意を決したように、みなみの顔を見たゆたかは驚いた。

 

みなみの顔は真っ赤に染まっていて、目はいつもの眼光はなくトロンとしている。

口は小さく開かれて、その薄く桜色の唇からは細く熱い息が何度も漏れだしているようだった。

 

「……」

 

無言で頭を傾けて淡い笑みを浮かべたみなみは、

 

「私はどうすればいい?」

 

夕焼けの中に溶けて消えてしまうほど小さな声で言った。

その言葉に、ゆたかの体がビクッと震え、心音が耳の奥の鼓膜を激しく揺さぶるほど大きくなる。

頭の中がぼんやりとして何にも考えられない。

背徳心にさいなまれていた心は、今では、自分の体へ行われる行為に対する、言いようがない感情で満たされていく。

太ももがガクガクと震えて、立っているのも辛いが、それでも必死に足を前に進めながら。

 

「……あ、あの……じゃ、じゃ……じゃあ、腋の下……」

 

そう言いながら、顔がカッと熱くなる。

いつもの自分なら恥ずかしいとも思わないだろう『腋の下』という言葉。

その単語がひどく卑猥に思えて、恥ずかしくて恥ずかしくて、全身が震えだしてしまう。

お腹の奥が、胸が、頭の中が熱い。

立っていられないほど体中が震えて止まらない。

 

「……うん」

 

みなみは一つうなずき、ゆたかの左手首を握ると優しく持ち上げようとする。

思わず力を込めてしまった腕、それに気づいて、みなみが手を止めて小さく微笑む。

 

「大丈夫、優しくするから」

 

夢の中で響くように、じんわりと耳に届いた言葉。

その言葉に強い安堵感を覚えて腕に込めた力を引きながら、ゆたかも微笑みを返しつつ、自分の意志でゆっくりと腕を上へ持ち上げていく。

ドクッドクッと鼓動が弾けてしまうのではないかと思うほど強くなり、全身がさらに熱くなる。

額には緊張のせいか羞恥心のためか、あるいは純粋に興奮のためなのか汗が滲んで頬を伝った。

 

 

 

みなみは自分の目の高さまで腕を持ち上げると、右手を大きく開かれた彼女の腋の下へ伸ばしていく。

ゆっくりと、ゆっくりと。

怯えさせないように、怖がらせないように、そっと。

 

「み……み、み……みなみ…ちゃん……」

 

荒い息の中に自分の名前を呼ばれて、みなみは「うん」と小さく首肯し、右指をゆたかの腕の付け根へと触れさせる。

柔らかな皮膚の感触と併せて、汗に触れた皮膚の湿り気を感じた。

 

「……っ!」

 

ビクッ!と体を大きく跳ね上がる小さな体。

腕に力が入り、必死に下ろそうとしている様だったが、ここで手を離してはいけない。

少しだけ手首を握る指先に力を入れながら、腋の下に触れている右指をモゾモゾと動かしてみる。

 

「…ふ、ふえぇぇっ!」

 

一瞬、自分の身に何が起こったのか分からなかったのだろうか、ゆたかはそんな声を上げて背中を大きくのけ反らせる。

必死に腕を下ろそうとしても、みなみに握られ持ち上げられているため、それは叶わない。

 

腋の下の柔らかな皮膚の上で、汗を帯びたその表面を指の腹で撫でるように擦ってみる。

 

「うひゃあぁっ!!」

 

顔に困ったような笑顔を滲ませて、腰を大きく振って身をよじる。

腋の下の上に与えられる刺激に辛抱堪らない様子の彼女は、その顔を先ほどよりもさらに赤く染めてビクッビクッと小柄な体と、細い腕を震わせていた。

腋の下の皮膚を指先でグニグニと揉むようにいじってみる。

 

「あはっ!み、みなみちゃっ…ちょっ…!く、くすぐったいぃぃ……!」

 

可愛らしい言葉を耳に受けながら、みなみは指先を動かし続ける。

柔らかな皮膚を爪先で優しくコリコリと引っ掻くように刺激したり、少しだけ指先を皮膚に沈ませてグニグニとかき混ぜるように悪戯したり。

 

「きひっ!ひひっ!ちょっ……うひゃぁっ!?…く、くすぐったいよぉっ……!」

 

精一杯に目をつむって、眉間にシワを寄せくすぐったさに必死に耐えている様子が良く分かる。

全身を震わせて、くすぐったさに時折「ひゃはっ!」や「くひぃっ!」と可愛らしい嬌声を上げながらも、ゆたかは自分の体をそこに止めようと足を踏ん張っている様だった。

全身を動かしているからだろうか、ゆたかの全身から汗が噴き出してきている。

みなみは、その顔色を懸命に伺いながら、腋の下に思いつく限りのくすぐったい攻撃を仕掛けて行く。

 

「くうぅ……み、みなみちゃ……っあひゃぁぁっ…!!」

 

小さな体が自分の腹部にぽすんぽすんと何度も沈み込む感覚を楽しく感じながら、指先を動かし続ける。

敏感な皮膚の上に指先を走らせ、それだけの刺激が、ゆたかを笑い転がせている。

顔を真っ赤にして、くすぐったさに身をよじらせて悶える彼女の姿を見下ろしながら、みなみの心にも少しずつ不思議な感覚が芽生え始めていた。

 

額から幾筋もの汗の滴を流しつつ、短いツインテールを振り回す彼女の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。

瞳に浮かんだ涙が、つぅと頬を伝うのを見て、みなみはハッとして腋の下で動かし続けていた指を止める。

 

(や、やりすぎた……?)

 

そう思い、腕を掴んでいた指を離す。

途端「ふえぇぇ……」と吐息のような声を漏らしてフラリと倒れ込みそうになるゆたかを慌てて抱きかかえた。

肩に触れる指先に、汗で濡れたきめ細かな肌の感触。

普段の自分だったなら決して気づきもしない色々な事を感じ取りながら。

みなみは汗と涙でぐしょぐしょになった彼女の顔から前髪を払った。

 

「ふぁ…ふぇぇ……つ、つかれた……」

 

ふにゃふにゃの笑顔で返されて、思わず顔が真っ赤になる。

全身の力が抜けてだらんとした小さな体を両腕で受け止めながら、その全身から放たれる甘い香りを感じつつ。

困ったような、しかし、どこか満足げなようにも見える弱々しい笑顔に、そっと語りかけた。

 

「ごめん……やりすぎた」

 

「そ、そんな事ない……ちょっと疲れただけ……」

 

そう言いながら、懸命に顔を上げて微笑みを作る。

みなみは、そんな彼女が可愛らしくて、肩を支える指に少しだけ力を込めた。

 

「……ちょっと休んだら…続きしよ…?」

 

そうつぶやきながら、ゆたかの目がゆっくりと閉じられていく。

それほど呼吸は荒くないが、ひどい睡魔に襲われている事は端から見ても分かった。

火照りが引いていく代わりに、彼女の体を眠りの暖かさが包んでいく。

 

「……少し休んだら……続きを……」

 

「うん」

 

もう目も開けている事すらままならぬ様子の彼女は、ぼんやりとした意識で懸命に視線を送り続ける。

しかし、数秒後には。

 

「…続き……しよ……」

 

すーすーと静かな寝息を立て始めていた。

小さく揺れる肩を胸に抱きながら、みなみはその小さな体をギュッと抱きしめる。

 

校舎の中にはいよいよ静けさが広がり、校庭にも生徒の姿は一人として見あたらない。

夕焼け色の空は紫色に変わり、夜の世界が訪れようとしている。

薄暗くなり始めた教室の中で、みなみはもうしばらくの間、こうして彼女の小さな体を抱きしめていたい。

そう思っていた。