!!18歳になっていない人は見ちゃダメ!!
こなた×かがみ(らきすた)
真夏の更衣室はむんとしている。
カーテンは閉ざされて、湿気を含んだ空気が、まるで肌にまとわりつくように、室内に渦巻いているように感じた。
「それにしても、おねえちゃんと一緒に体育なんて、初めてじゃない?」
つかさが、すっかり着替え終えて、ロッカーの鏡の前で、折りたたみブラシで髪をとかしながら言った。
「あー、そう言われればそうね」
汗でベトつく、白い半袖の運動着を脱ぎながら、かがみが小さく言う。
更衣室には、かがみとつかさ、そして、こなたの姿しかなく、皆は先に着替えてしまったようだった。
壁にかけられた円形の針時計は、午後4時35分を指そうとしている。
「でも、同じ教科の同じ先生が、2人も休みなんて滅多にない事だし、今日はレアな日なのだよ」
と、まだ着替えてすらいないこなた。
汗で濡れた髪の毛を、タオルでわしわしと拭きながら、鏡でしきりに髪型を気にしている。
「へー、こなたも髪の毛に気を遣うんだ?」
さも意外そうな、からかい半分のかがみの言葉に、こなたが不敵な笑みを浮かべる。
「ふっふっふっ、かがみんや。アホ毛は萌え要素なのだよー」
これを失ったら命はないとばかりに、頭のてっぺんから飛び出した髪の毛を指先でつまむ姿に、かがみが笑みをこぼした。
放課後、体育の授業の前に小さな混乱があったため授業の時間が伸びたためか、ホームルームはなく、そのままの下校が許されている。
まだ夕焼けには遠いが、昼間よりも、若干の優しさを含む日差しがカーテンの隙間から差し込んでいた。
「さて、私、先に行ってるね」
つかさは、リボンを結び終えると、まだ汗のひかない顔に、フェイスタオルを当てながら出口へと足を進めていく。
「あ、つかさ先に帰ってて。私、ちょっと寄る所あるからさ」
「うん、じゃあ先に帰ってるね。こなちゃん、バイバイ」
小さく手を振るつかさに、こなたも手を振る。
キィと、軽い金属音を立てて開く扉。
バタンと扉が閉まると、プレハブの更衣室全体がガタンと揺れたように感じた。
一瞬、しんとする室内。
外からは部活動に励む生徒達の声と、ボールを蹴る音が響いてきていた。
「それにしても暑いわねー」
どこか、イライラとした口調で、かがみはセーラー服の上着をガバリと頭からかぶると、袖に腕を通す。
こなたも、ようやく汗が引かない体に諦めたのか、運動着の上着の裾に手をかけた。
「そういや、こなたの運動着って、ダブダブだよね……」
かがみが、まるで小学生のように小柄な体に、たゆみを持った運動着を見ながらつぶやく。
「んー……本当は、もうちょい小さいヤツがいいんだけど、ないんだよね」
「サイズは?」
「エス」
エスでもゆとりのある、こなたの体に若干の羨望を感じつつ、かがみは自分の胸を見る。
その後、こなたの胸に視線を送り、思わず「ふ」とニヤついてしまった。
「……かがみん、比較したでしょ、胸」
「そ、そんな事ないって!」
「……」
正直、ウソだった。
自分の胸の大きさが気になるお年頃、どうしても他人の胸と、自分の胸の大きさを比較してしまう。
みゆきと比べるにはほど遠く、つかさよりも若干大きいけれど、他のクラスメイトと比べると、やや小さい。
それはコンプレックスではなかったが、ついつい、自分の物よりも小さいこなたと比較してしまう。
少しだけ、得体の知れない優越感を感じつつ、ショートパンツに手をかけたかがみの脇腹に、こなたが「とうっ」と言いながら、指を突き立てる。
「うひゃ!?」
素っ頓狂な声を上げて、思わず身をよじるかがみ。
びっくりしながら振り返ると、こなたが、右手の人差し指を立てて不敵な微笑みを浮かべている。
「かがみん、脇腹弱いんだねぇ」
「そ、そんな事ないわよ!子供じゃあるまいし……」
明らかに狼狽した様子で、かがみが否定する。
「ふーん……とうっ」
ぷすっ、と音を立てるようにして、再びこなたの指先が、かがみの脇腹に突き刺さる。
「うぎゃあっ!」
思わず、カエルがつぶされたような、ひどい声を上げてしまう。
「ちょ…こ、こなた!」
「だって、かがみん、くすぐったくないんでしょ?」
ふっふっふっ、と容姿と年齢に似合わない親父臭い笑みを浮かべるこなたに、かがみのプライドが敏感に反応してしまう。
「と、当然でしょ!コチョコチョなんて、私には利かないのよ」
「ふーん……へぇ……ほぉー……」
「な、何よ、その疑いの眼は……」
目を細めて、かがみの顔を覗き込むこなたに、ますます、かがみのプライドが反応してしまう。
「わ、分かったわよ!じゃあ、くすぐってみなさいよ!」
かがみは言ってから、しまったと思った。
思わず、その場の雰囲気だけで言ってしまったセリフ。
しかし、実際にしかがみは、くすぐりに人一倍弱いことを自覚していた。
だが、言ってしまった以上、後に引く事はできない。
特に相手が、こなたであるという事が、かがみのプライドを強く刺激していた。
「ん……いいの?」
「お、女に二言はないわよ……」
どこか弱々しい言葉が口から漏れてしまう。
「ふっふっふっ、じゃ、遠慮なく」
ワキワキと指先をざわつかせながら、こなたがより一層、不敵な笑みを浮かべ、かがみに近づいてくる。
ギュッと全身に力を入れ、もうじき訪れるだろう脇腹への刺激に、全身をこわばらせる。
(絶対笑うもんか)
強い決意をして唇を噛んだ直後、こなたの指先が触れた場所は、彼女の予測とは異なる場所だった。
こなたの指先は、かがみのセーラー服の袖口から腕の付け根に入り込み、その先の薄い皮膚を掴み上げる。
「ひゃひっ!こ、こなたっ!」
目をまん丸にして思わず身をよじり、思わず必死な形相で叫んでしまう。
すると、こなたは、かがみの心境をすべて知り尽くしたかのように、ニヤリと笑みを浮かべると、指先をグニグニと動かしながら、
「ほほー、かがみんの弱点は、脇の下というわけかぁ」
などと、囁いてくる。
「ひっ……くっ…そ、そんな…そんな事ないわよっ!」
脇の下に入り込んだこなたの細い指先が、じっとりと汗に濡れた皮膚を掴む度に、たまらない刺激が送り込まれる。
幾度となく笑い声を上げそうになるが、かがみはその刺激に懸命に耐えていた。
「じゃあ、かがみんよ。万歳をしてはくれまいか」
「…!ちょ、何で万歳なんてしないといけないのよ!」
突然の提案、弱点を大きく露出してしまう危機に、かがみは強い口調で反応してしまう。
「だってー、くすぐったくないんでしょ?ほれほれ、苦しゅうない」
「お前はどこかの悪代官か……」
そう言いつつ、もはや引くことのできないかがみは、恐る恐る両腕を上げる。
そして、頭の上で両手をギュッと握りしめ、顔には必死な表情を浮かべつつ、決して腕を下げないことを心の中で強く誓った。
「ほ、ほら…万歳したわよ……」
万歳をしてから、その姿を強く意識したためか、顔が紅潮していくのを感じる。
普段は決してしない姿勢、あまり見せる事もない部分。
それを露出しようと、自らの意志で姿勢を維持していることに、羞恥心が生まれつつある。
「じゃ、いくよん……」
こなたが、半袖の左袖を指先で降ろしていくのを感じる。
(は、恥ずかしい……)
そう感じている自分に、少しだけ驚いた。
普段はあまりに意識しない、意識することもない脇の下。
それを、親友であるこなたに露出されていく感覚に、ますます顔が熱くなっていくのを感じる。
こなたは、巧みに指先で左の袖をまくり下げ終えると、露出された脇の下に、人差し指を立てる。
「ぅくっ!」
思わず、かがみの口から空気が漏れる。
そのまま、指先をツーッと降ろしていくと、かがみの体が小刻みに震えた。
うつむき、強く口を結び、懸命に敏感な箇所に送り込まれるくすぐったさに耐える。
脇の窪みの辺りまで指を降ろし終えたこなたは、次に、脇に指先で円を描き始める。
時には指先の腹を使い、時には爪先を使い。
体育後、汗が乾き初めてきた脇に、じわじわと再び汗が噴き出し始め、皮肉にもそれが、こなたの指先の動きに潤滑さを与えていく。
「うう……くっ……ひっ……」
何回、円を描いただろうか、こなたの指先は、ぴたりと脇の窪みの辺りで止まる。
激しい刺激に、顔を真っ赤にして耐えていたかがみに、一時の安らぎが戻る。
だが、それは数秒として続かなかった。
「ぎっ!ひぃっ!!」
かがみの悲鳴、それは、こなたが脇の下を指先でつつき始めた事によるものだった。
柔らかく、薄い皮膚に、こなたの細い指が容赦なく食い込み、かがみの体がその度にビクリビクリと大きく脈打つ。
同時に、食い込まれた指先を、グリグリと動かし、かがみにとっては形容の出来ない刺激を生み出していく。
「ひぁっ!はぁっ……はぅっ!ふぇ……ふぁっ!」
こなたは、顔を真っ赤にして、必死に我慢するかがみの顔を見つめながら、親父臭くニヤニヤと笑うと、指先を全て立て、左の脇の下にあてがった。
そして、汗に濡れる肌の上を、本格的にくすぐり始める。
「ひっ!いがっ!くふっ!ふっ、ふぁっ!」
脇の下の皮膚を、こなたの指が縦横無尽に動き回る。
それは、今まで送り込まれていた、どの刺激よりも激しく、強烈だった。
いよいよ、我慢ならなくなり始めた「笑い」の衝動。
何とか耐え続けていた口元が歪み始める。
頭の中で「くすぐったい」という気持ちが大きくなり、あったいう間に、思考を支配していく。
(くすぐったい!くすぐったい!くすぐったいよぉ!!)
耐えられない、しかし、耐えなくてはならない。
かがみは、こなたの指先から送られる、その怪しい刺激に、なぜか不思議な感覚を覚えつつあった。
「ふぅっ!くっ……うっうぐっ!ふぅぅっ!!」
それは、こなたの指から送り込まれるくすぐったさと相成って、確かに、かがみの体を包み込んでいく。
自分でも、そんなはずはないと思い、しかし、その思いとは裏腹に、それは心の中すらを駆けめぐっていく。
(このまま、笑って、くすぐられ続けたら、どうなってしまうのだろう?)
「ふうっ!うっ!も……もうダメぇ……うひゃははっ!あははははは!」
ついに、我慢ならなくなった口から、笑いがほとばしる。
そして、かがみは、自分の中で生まれ始めていた強い欲求の正体を知った。
「ははははは!!ちょっ、こな……やめぇ!!あはははははは!!」
(こなたに、くすぐり続けられたい……)
ぴたりと、こなたの指の動きが止む。
心の中で、ほっとする自分と、残念に思う自分が生まれ、それは一瞬にして『どうして、やめちゃうの?』という気持ちに転じていく事に、少しだけ驚いた。
「かがみん、弱いじゃん」
嬉しそうに言うこなたに、かがみは、息も絶え絶えに床にへばりつく。
呼吸が弾み、心臓がドクンドクンは強く脈を刻んでいる。
「……だ、大丈夫、かがみん?」
ゼイゼイと息を切らして、うなだれるかがみに、こなたも心配になったのだろう、顔を心配そうに覗き込む。
トクンと、胸が弾んだ。
それを隠すようにして、目を反らし「だ、大丈夫……」と一言返すだけで精一杯。
真夏の夕暮れにはまだ遠く、時計はまだ5分しか時を刻んでいない。
かがみは、自らの体に芽生えた、この不思議な気持ちの処理に、抑えられない鼓動に身を委ねつつ、困惑していた。